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「高級ブランドはなぜ高い?」服の4割を廃棄するファッション界、3つの疑問

 メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。連載第188回目をよろしくお願いします。
メンズファッションバイヤーのMB

メンズファッションバイヤーのMB。「『おしゃれに見える』にはちゃんと理由があるんです」が持論(撮影/難波雄史)

 今回はファッションに関する疑問に回答しましょう。 「売れ乗った服はどこへ行くの?」 「ユニクロはなんであんなに安いの?」 「高級ブランドの服は布と糸なのになんであんなに高いの?」  そんな疑問を解消させます。

売れ残った服はどこへ行く?

 誰しも一度は疑問に思ったことがあるはず。今の時期、夏のセールが過ぎて、さすがに品数が減った感はあるにせよ、それでもお店の中には数え切れないほどの服が並んでいます。「この洋服は売れ残ったら、いったいどこへ行くのだろう……?」という疑問に回答しましょう。  まず、定価販売期間を経て売れ残った服はセール価格となり、安く捌かれることになります。それでも残った洋服は関係者限定のファミリーセールなどでさらに安く売りさばかれ、さらに残った洋服は問答無用で廃棄・焼却処分となるのです。 「廃棄処分と言っても最後はそんなに残らないんでしょ?」  そう思うかもしれませんが……とんでもない! なんと上記の販売ルートを経ても4割が売れ残って廃棄されているというデータもあるのです。原価割れの叩き売りをしても6割程度しか消化できない、日本のアパレルは完全なオーバーストア・供給過多状態です。  アパレル関係者は雁首揃えて「洋服を愛している」「ファッションが好きだから」とぬかしますが、4割廃棄しているようなビジネスモデルを放置して、どの口が言うのか甚(はなは)だ疑問です。毎年毎年4トントラック数台分を廃棄・焼却処分しているブランドもあるくらい。  そして、当然ですが、廃棄されている分も洋服の定価に加算されているわけです。いつまで経っても洋服の値段が下がらないのは、こんなところにも理由があるわけです。

ユニクロはなんであんなに安いのか?

ユニクロ ユニクロが世に出たばかりの頃は「安かろう悪かろうだ」と言う人もいましたが、今ではもうアパレル関係者ですらユニクロの質の高さを認めざる得なくなっています。カシミヤにスーピマにカイハラデニム……市場価格の半分以下程度の値段を実現し、マーケットを駆逐し続けているユニクロですが……では、なぜ他ブランドと比べて、あれほど圧倒的な品質と値段を実現できるのでしょうか? そこには彼らのブランド設計思想が関わっています。  工業製品でも衣服でもなんでも同じですが、基本的には「数を作れば単価は下がる」原理が働きます。100個しか作らないものと、1億個も作るものでは単価に差があるのは当然です。ファストファッションはまさにこの数の論理を活用したビジネスですね。  H&Mなど一般的なファストファッションは世界展開し、大量に製品を作ることで通常よりも格安に衣服を提供することができています。加えて、海外最新トレンドなどをスピーディにコピーすることで、「安物でも今っぽく見える」価値の高さも実現しています。  しかし、ユニクロとH&Mを比較すると、明らかにユニクロのほうが品質が高い。どうして世界規模ではH&Mに劣るユニクロが、H&Mよりコスパの高い衣服を生産できるのでしょうか? その理由は、実はユニクロは「スローファッション」だからです。  実はユニクロの製品は10年単位で売り続けているものばかりです。カシミヤのニット、フリース、カイハラデニム、エアリズム、ヒートテックなどなど、どれも10年単位でユニクロの店頭で見かけるものばかり。このように彼らはロングスパン戦略で大量に生産し続けられる「10年以上売り続けられるもの」を開発し、1型あたりの生産数を極大化しているのです。  H&Mなどの一般的なファストファッションは言葉通り「ファスト」。トレンドをいち早く取り入れて、新製品をどんどん出して消費者に飽きられないようにするモデルです。ところがユニクロは言葉にするなら「スロー」、トレンド関係なく長く大量に売り続けることができる商品を開発し、その分単価を極限まで下げているモデルなのです。  もちろん一長一短あり、こうした設計思想だからこそユニクロの商品はトレンドに欠けるので面白みがないし、H&Mはデザインは面白いものの品質が劣るわけ。つまり、長く使うものはユニクロ、トレンドライクにたまに1、2点はファストファッションを混ぜる……なんて買い方が一番賢いでしょう。
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高級ブランドはなんであんなに高いのか?
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