「布と糸で30マンって……!?」 　表参道や銀座に並ぶ高級ブランド品を見て、そう思った方も多いはず。「素材が違う」と主張する人もいます。確かに素材のレベルが違う場合もありますが……高級ブランドだからといって必ずしも極上素材というわけでもありません。 　ユニクロの1枚2900円のエクストラファインコットンよりもはるかに劣る素材で1枚6万円の値付けをしているブランドもあります。では、その値付けの根拠はいったいどこにあるのか? 　実は値付けは複雑な理由があり、一言では説明できないのですが、一つ大きな要素としては「デザイン費用」です。ユニクロやH＆Mなどのファストファッション、もしくは国内で活動するブランドやセレクトショップのオリジナル品などはすべてほぼ例外なく「海外コレクションのデザイン」を模倣することをデザインの着想点としています。 「流行は誰が仕組んでいるの？」と質問されることが多いですが、実は誰も仕組んでません。ファッションにおける「かっこいい」とは相対的なものです。人と違う部分があるから、おしゃれと認識されるわけで、その他大勢と全く同じ服装だったらそもそも区別すらされません。 　例えば、細身のシルエットが流行しすぎれば、飽和状態となり相対的に価値が下がります。そうすると感度の高い人は「ちょっとユルめの方がかっこいいんじゃないか？」と違う道を模索します。こうした「価値のうねり」がファッショントレンドの源泉であり、そして、そのうねりをイチ早く察知できる能力と知識を持った人たちが「世界的なデザイナー」といえるでしょう。 　国内のデザイナー、ブランドはそんな能力がありません。だからこそ海外のコレクションを模倣することからスタートします。そして、当たり前ですが、彼らはゼロから作っていないわけですから「デザイン費用」をそこまで取ることはできません。他方、海外ブランドはゼロからの着想を行なっているわけで、そこに対して費用を加算するのはある意味、当たり前。彼ら自身のプライドであり、仕事に対する誇りの象徴でもあるでしょう。 　こう考えるとデザイン費用も「少しは許してあげてもいいんじゃないか」とも思えます。「優れたデザインに対して対価を払う」というのはヨーロッパでは当たり前のことだし、「布と糸の構成物でしかないじゃないか」と批判するのはあまりにも原始的です。書籍を指して「紙とインクじゃないか」と言うようなもの。これは文化の違いではないかと私は思います。 　日本はもともと和服の文化、和服はデザイン性よりも素材や染めに凝る文化です。デザインやシルエットは同じだけど「素材」で差を出すのが和服。だからこそ日本人は素材……つまり「布と糸の原価」で洋服を見ようとします。しかし「洋」服は違う。デザイン勝負です。書籍と同じように着想や発想にお金を多少払ってもいいのではないかなと思います。 「高級ブランドはなんでこんなに高いの？」 　そもそもそうした疑問を持つこと自体が日本人のデザインに対する捉え方、文化の未成熟さを象徴しているのかもしれません。 　以上、「「高級ブランドはなんであんなに高いのか？」ファッションにまつわる3つの疑問」でした。さらに詳しくは毎週配信の私のメールマガジン「【最も早くオシャレになる方法】現役メンズバイヤーが伝える 洋服の着こなし＆コーディネート診断」にてお届けしております。興味があれば、ぜひご購読ください。ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 <実践編>』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超！ （Twitterアカウント:@MBKnowerMag）