還暦になった鴻上尚史、「夢を見ること」を描いた新作音楽劇への思い
― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―
8月11日から新作音楽劇『ローリング・ソング』の公演が始まりました。
3世代の男達、20代の中山優馬さん、40代の松岡充さん、60代の中村雅俊さんが、歌い、ぶつかる物語です。
松岡充さん演じる山脇雅生は、昔、ロッカーでしたが売れず、夢を諦めて、家業である納豆会社を継ぎました。ある日、雅生の所に一人の青年、中山優馬さんが演じる篠崎良雅がやってきます。そして、「私はあなたの子供だ」と言うのです。
自分の母親は若いころ、ロッカーだったあなたの熱烈なファンだった。
母親はずっと父親の名前を言わなかったけれど、死んだ後日記を見たらあなたの名前が書いてあった。
けれど、そう言われた雅生は、「やったのかなあ。やんなかったのかなあ。なにせ、ロッカーはそういうところ、ルーズだからなあ」と答えるのです。
息子と名乗る良雅は憤慨します。母親は、父親は有名なロッカーだと言ったのに、今のあなたはなんだ? 納豆を売っているただのくたびれた中年じゃないかと。
一方、中村雅俊さん演じる小笠原慎一郎は、夢を売る結婚詐欺師で、雅生の母親、久野綾希子さん演じる山脇久美子をだまそうとします。
また、雅生は離婚していますが、娘がいます。その娘、森田涼花さん演じる原口綾奈は、ライブハウスで出会った良雅に兄であるとは知らず、恋をしてしまうのです。「そんな失敗した韓流ドラマみたいな展開なの!?」と父親である雅生は驚きます。でも、好きになっちゃったもんはしょうがないのです。
雅生は会社が傾き、母親に借金を申し込みます。けれど、母親は結婚詐欺師の口車にのり、嘘のチャリティー・ミュージカルに出資しようとしています。
若者は、売れないままバンドを解散し、途方に暮れています。恋する娘は、なんとか応援しようとします。
5人が、それぞれに「自分にとって一番大切なことはなにか?」を考え、あがきます。「夢を見ることのしんどさと素晴らしさ」がテーマの音楽劇です。
「夢を見ること」を描いた新作音楽劇と60歳の誕生日
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