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炎天下で災害救助する自衛官の制服が夏用じゃないのは予算のせい?

声が届いた?

 今回、うれしいことがありました。本連載で少し前に、冬の災害派遣時に自衛官が毛布もない体育館の床で雑魚寝している問題をレポートしました。自衛隊に好意的な議員たちにも話題となりました。視察の際に防衛大臣も自衛隊員がどんな場所で休憩をとっているのか気にしていたそうです。たくさんの人が災害派遣時の自衛官の宿営地の悲惨な状況に気づき変えなければならないと考えていた時に起こった災害でした。  夏用ですらない長袖の迷彩服の自衛官達の熱中症がとても心配でした。熱中症は重傷になると死亡率もかなりのものです。「あの分厚い迷彩服来ている自衛官達はきっと暑いだろう。大丈夫なのか?」と自衛隊を良く知る医師達も心配していました。実際、重傷ではないものの数十名の隊員が熱中症になり、皮膚疾患も発生していたようです。  そんな時です。災害派遣に従事している自衛隊員たちから、「災害派遣の宿営地にいったら、なんと!エアマットがあるんだよ。信じられるか? 柔らかい寝床が用意してあるんだぞ!」という声が聞こえてきました。 「災害派遣の自衛官を体育館の床に雑魚寝寝させるなんて可哀想、どうにかして~」と言ってきましたが、ほんとに対処してくれるなんて感動です!  しかも、現場によっては熱中症を防ぐためにレンタル冷風機を用意するところもあったのだそうです。すべての災害派遣現場が恵まれた装備だったとはおもいませんが、あちこちから声が上がっているところを見るとかなり大規模に待遇を改善したのだと思います。7月豪雨災害は激甚災害に指定されていましたので、内閣府やその他の省庁からの予算かなと期待しましたが、どうやら防衛省の予算で準備されたものでした。  防衛省の予算では大事な国防のための訓練や演習、装備品や修理のお金がけずられてしまいます。これでは防衛省内で「隊員のためのエアマットなどを買うから、武器、弾薬、燃料、修理等の重大な予算が削られて国防に穴が開く。こんなものに金を使ってはいけない」といわれてしまいます。  せっかくいいお話なのですから、災害派遣のために防衛省がつかった装備品の費用は補正予算を組んで補填してほしいものです。
陸上自衛隊Facebookより

陸上自衛隊Facebookより

 たしかに自衛隊は災害派遣の活躍で好感度が高くなりました。しかし、自衛隊は安全保障、国を守るための組織です。災害派遣で活躍すればするほど防衛にかけるべきお金がなくなってしまうのでは本末転倒です。  防暑服も含めて自衛隊を災害派遣でつかうなら、その為に使った費用は補正予算等で補填していく法律上の確約がほしいところです。「自衛官達が体育館の床で雑魚寝では可哀想、今回の豪雨災害ではどうにかしてあげてほしい」という全国の優しい人々の声で受け入れ態勢がわずかに変わりました。自衛官の身の回りの問題くらいは、私たちが声を上げれば少しは変わっていくのです。あきらめなくてもいいのです。あとは政治家が災害派遣で使った防衛予算の補填を考えてくれれば、ベリーベストなのですけどね。<文/小笠原理恵>
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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