災害派遣で頑張った自衛隊も給与カットされた民主党時代…あの悪夢を繰り返すな
「自衛隊ができない40のこと 35」
このたびの西日本豪雨により広島-呉を結ぶ広島呉道路や鉄道に土砂崩れのために流通が完全に止まり、呉市は一時的に陸の孤島になりました。陸上自衛隊がなかなか現地に近づけないなか、被災地にある海上自衛隊呉基地隊の護衛艦はいち早く入浴や給水の支援を開始しました。
呉市から江田島などの島々を結ぶ道路も寸断され、住民は身動きが取れなくなっていました。そこで普段は輸送艦の中に格納されている「LCAC-エア・クッション型揚陸艇」が島の人たちを呉港に運ぶ輸送支援を開始したのです。水しぶきを上げて迎えに来たLCACの姿を見て、島の人々はほっとしたり頼もしさを感じたりしたことでしょう。
港を離れた山間部には、大きなCH-47が支援物資を載せて飛びました。国道31号線の仮ルートが作られ緊急車両も入って来るようになり、次第に被災地も落ち着きを取り戻しました。首相官邸は生活必需品の輸送対策に追われましたが、コンビニへの配送車をいち早く緊急車両扱いにするなど、とても効果的な決断だったと思います。ほどなく、物資が運ばれないため休業中となっていたコンビニや商店が店を開け、様々な生活必需品も店頭に並び始めました。
断水で辛い思いをしていた呉市民のために、呉に基地を構える海上自衛隊がいち早く動きました。護衛艦には海の水を真水に変える造水装置があり、基地内にある装備も使って呉市民に給水と入浴の支援を行ったのです。当初は断水している地域も多く、暑いなか4時間待ちの列の被災者のせめてもの慰労のために音楽隊の演奏もあったそうです。この音楽隊の即興演奏はツイッターに投稿され、被災地だけでなく日本中を温かい気持ちにしてくれました。
演習場や基地イベント以外では見ることのない自衛隊のヘリや護衛艦や装備品ですが、何かあった時に私たちを助けてくれるものだと多くの人の心に強く刻まれたはずです。
写真は、自衛隊の実際の救助と支援の風景を、助けられている側の市民が撮影した記録です。
海上自衛隊の基地を抱え、普段から多くの隊員を見慣れている街の人々。その自衛隊には街を守り、人々を救出する力があることを、改めて実感したのではないかと思います。
西日本豪雨のような大災害が予想される場合、付近の自衛隊の基地では、災害派遣命令が出る前から要請が来ればすぐに対処できるように準備を始めます。土砂災害や河川の決壊など災害対応は一刻を争うため、準備と手続きは同時並行で動きます。
まず、地域の行政などの担当者から情報収集しつつ空振り覚悟で準備をします。必要なのは捜索・救助か、道路啓開か、それとも物を運んでほしいのか、水がいるのか。地域の担当者と調整しながら準備を先に進めているので、自衛隊の展開は早いのです。
広島の豪雨災害で活躍した、自衛隊呉基地の護衛艦
呉の海上自衛隊が給水、入浴、島からの輸送支援を開始
災害派遣は時間との勝負、命令前から準備する
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
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『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
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