炎天下で災害救助する自衛官の制服が夏用じゃないのは予算のせい?
「自衛隊ができない40のこと 38」
内閣府の自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査によると自衛官の好感度は89.8%だそうです。共産党など一部の人たちを別にすれば日本人のほとんどが災害派遣などで、人々を救う自衛隊を頼もしく思っています。埼玉県鴻巣市で10月に開催予定の航空自衛隊の航空ショーに、地元の共産党市議らが「戦闘と切り離すことはできない」と中止をもとめたそうです。しかし、主催する市商工会青年部は「中止の理由にはならない」として応じず、予定通り開催することにしました。
これまで共産党や活動家などが「軍靴の音がする~~」と中止を要求すると、腰砕けでイベントを中止する事が多かったのですが、ここにきて特別なイデオロギーをもった集団の政治的圧力に屈しない対応がでてきたようです。共産党の自衛隊イベントに対しての政治的圧力でささやかな市民の楽しみが潰されるなんてヒドイです。政治家のごり押しに忖度しなかった主催者に拍手です!
さて、自衛官の好感度があがったターニングポイントは、東日本大震災の災害派遣での活躍です。東日本大震災の発災時は冬でした。しかも東北は寒かったのです。
しかしながら、7月西日本豪雨災害は、埼玉県で41.1度が記録されるような全国的に記録的酷暑の時期におきた災害です。東北とは違う問題が起きていました。
災害派遣で瓦礫をかき分け、土砂を手掘りする自衛官の姿を見てください。東日本大震災で迷彩服の自衛官姿を見慣れているので気づきにくい問題があります。自衛官が着ている迷彩服が、長袖でしょう? 瓦礫などで怪我をしないように長袖は仕方がないところはあります。実際にケガをしないために訓練や演習でも長袖をまくり上げてはダメと言われる時もあるようです。
酷暑の中、長袖の迷彩服で過酷な肉体を酷使して働いている事に気付けば、それがどれほど大変かわかると思います。さらに、よく見てください。この迷彩服、いわゆる「夏用(防暑用)」ではないのです。
自衛隊はイラク派遣時に、「防暑服4型」という名の猛暑の中でも行動しやすい迷彩服を作りました。沖縄やPKO派遣部隊など一部の隊員だけに支給されています。さらに破れにくいようにリップストップ加工もされています。つまり真夏の災害派遣には「防暑服4型」はもってこいのものなのです。繰り返しになりますが、7月豪雨災害では夏用の迷彩(防暑服)ではありませんでした。これではさぞかし暑かったでしょう。
自衛隊はこの防暑服を沖縄とPKO活動だけでなく全国の隊員に配るべきです。異常気象などのため毎年夏は過酷な暑さです。真夏にテロや侵略してきた敵と戦う戦場でも、動きやすく暑さを少しでも軽減できる迷彩服のほうが、様々な場面で有利です。ただ、現在の防暑服では迷彩柄が日本の山野に合わないデザインなのでそのあたりは戦闘用と考えるとまだ考慮が必要です。導入するには微調整する必要はあるかと思います。
とはいえ、陸自の新制服導入が決まったときに、新しい制服を全員の隊員に配るには予算の関係で10年かかるという報道がありました。日常の制服ですら揃えるのに10年かかる予算不足です。機能性の高い防暑服も予算上の問題で却下されてしまうでしょう。でも、戦場ではほんのわずかな差で勝ち負けが決まります。たかだか制服の機能で負けるなんて情けないことにならなきゃいいなーと思います。ケチケチしすぎです。
やっぱり予算が足りない
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
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『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
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