ライフ

都内屈指の不人気タウン「尾久」ってどんな街? 東京駅まで14分…なのに誰も降りない

高層マンションが乱立。住人は意外と多い

 誰も降りない尾久駅前は、それは寂しい風景が広がっているのかと思いきや、人通りはそれなりにある。そして駅から徒歩圏内には高層マンションが立ち並ぶ。建設中のマンションもあるようだ。駅前に店を構える中華料理屋の店主がこう話す。 「尾久駅前はマンションがバンバン建設中でね、住んでいる人は意外と多いんだよ。尾久駅前に店なんか出して大丈夫なのかと思うかもしれないけど、昼なんか客が入りきらないんだから。これでも店を開いてから30年以上経っているんだよ」(中華料理屋の店主)  しかしながらこの店主にも一抹の不安はあるという。 「昔は昼休みのサラリーマンとかがたくさん来たんだけど最近は減ったね。マンションが増えた一方で、企業のオフィスが減っているみたいなんだよ。だからいまは建設現場で働いている男性の客が多い。正直、マンションが全部完成しちゃったらこの店はどうなっちまうんだって心配はあるよ」(同上)
尾久

駅前にはマンションが立ち並ぶ

ラーメン

手の込んでいない感じがちょうどいい美味さを出している

 上野駅まで乗車時間6分、東京駅まで14分。アクセスが便利なうえに家賃相場も都内では安め。新宿方面には行きづらいものの、新橋、大手町、丸の内あたりで働く人にとって、立地的にはピッタリかもしれない。

駅名は“おく”だけど地名は“おぐ”!

 尾久駅前で取材を進めるうちに、あることに気が付いた。それは尾久に住んでいる人々は“おく”ではなく“おぐ”とにごって発音するということだ。駅名は“おく”のはずだが……。駅前にある観光案内所で働く50代の女性に聞いてみたところ、正式な地名は、なんと「おぐ」なのだという。どういうことなのか。 「尾久駅は北区にあるのですが、尾久という地域自体は荒川区にあるんです。そのため駅名を決める際に北区と荒川区の間でひと悶着あり、本当は“おぐ”と読むところを“おく”と読むことで解決したらしいんですよ」(観光案内所の女性)  この駅名の読み方問題には諸説あるとのことではあるが、とりあえず本当の読み方は「おぐ」。生まれも育ちも尾久というこの女性は、「おぐ」と普段から発音するし、住んでいる人々もやはり「おぐ」と言うらしい。  都内に通勤する人々からすると、ぽっかりと穴が開いたような存在である尾久駅ではあるが、降りてみると新しい発見がいくつかあった。もし、仕事が早く終わった日などがあれば、普段は通り過ぎるだけの駅に試しに降りてみるのはどうだろうか。どうせ定期券で降りられるのなら、通勤利用だけではもったいない。<取材・文・撮影/國友公司>
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
1
2
おすすめ記事