更新日:2018年12月05日 17:10
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“大人の発達障害”を患う会社員の苦悩「病気と診断されても生活が楽になるわけではない」

クスリ

写真は、イメージです

「薬は判断能力が鈍るので飲めない」

 越川さんに限った話ではない。都内在住で現在は中小出版社に勤める大谷充さん(33歳・仮名)もその一人だ。大谷さんは、昨年末にADHDの診断を受けた。 「大切な打ち合わせの用事をポカしてしまったり、マルチタスクが思うように出来なくて……そんな自分に疑問を感じ、病院に行きました。薬を処方されたのですが、この薬が自分には全く合わなくて。飲むと日中でも意識が朦朧としてしまい、業務どころではなくなってしまいました」  処方された薬が体に合わず、通院前と変わらない状態で日々生活することを余儀なくされた。その後、通院もしなくなったという。 「結局、ADHD診断なんて自分の現状を理解するぐらいのメリットしかないように思いますね。もちろん、薬を飲んで多少は症状が改善されるという方もいるとは思いますが、じゃあ死ぬまでその薬を飲み続けて生活するのか、という話です。自分の場合は、とにかく予定の管理が著しく出来ないので、スマホにすべての予定を書き込んで各イベント毎に開始1時間前にアラームを鳴らすようにしています。幸い、多少ミスは減るようになりましたが、根本的には何も解決していません。自分が頑張って病気を克服していくしかないんです」  大谷さんは「とにかく自分が頑張るしかない」と何度も繰り返した。  両者に共通するのは、“ADHDの診断を受けてからがスタート”だということだ。つまるところ、目の前の困難を打開できるのは自分自身しかいない――。  メディアで「大人の発達障害」が取りあげられる機会も増えたが、一般社会で、自分の生活圏内で、勤める会社で……理解が進んでいるのかと言えば、そうでもない現実があるのだ。<取材・文/小畑マト>
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