更新日:2018年12月05日 17:10
ライフ

“大人の発達障害”を患う会社員の苦悩「病気と診断されても生活が楽になるわけではない」

 全国で5人に1人の割合で発症しているというADHD。かつては未成年の問題と思われていたが、現在では成人後の「大人のADHD(大人の発達障害)」が注目を集めている。  さまざまな医師や専門家がメディアで語り、当事者たちが日々の苦悩や生きづらさを吐露する機会も増えたが、そんな中、幼い頃から多動の気があり、成人になってから始めてADHDと診断された越川優斗さん(26歳・仮名)は「病気と診断されたからといって生活が楽になるわけではない」という。 診断

ADHDと診断されても「出来ない」では済まされない

 越川さんが、成人ADHDだと診断されたのは2年前にさかのぼる。 「自分は子どもの頃から多動の気があって忘れ物が多く、予定通りに何かをこなすということが出来なかった。いわゆる“落ち着きのない子ども”でしたね。当時はまだ幼かったので許されてきたのですが、成人して会社に勤めるようになってからは状況が一変しました。今の職場ではPC作業がメインの事務仕事をやっているのですが、完了した作業の報告業務を忘れたり、細かい数字のミスをしてしまったり……当時はツラい出来事の連続だったのですが、ついに自分で自分を信用できなくなって病院に駆け込みました」  その結果、越川さんは成人ADHDと診断された。しかし、病院から専用の薬が処方されるも越川さんの現状が変わることはなかったのだ。 「自分がADHDと診断されて改めて感じたのは、“ADHDだからといって今の状況が楽になるわけではない”ということです。ADHDだからミスしてもしょうがない、とはなりません。障害者雇用を受けて働けるわけでもないので結局『じゃあ自分でどうするか』ということにしかならない。今は処方された薬を飲みながら、ミスを減らしていくよう手の甲に覚え書きをしたり、なんとか工夫しながら会社に勤めています。帰りの電車では、小学生みたいで恥ずかしいですよ」  取材時も越川さんの手の甲にはうっすらと業務のメモ書きであろう言葉が書き残されていた。今はなんとか仕事をこなしているが、将来への不安で胸がいっぱいだという。 「今後もミスが続くようであれば会社を辞めることになるかもしれませんね」
次のページ right-delta
「薬は判断能力が鈍るので飲めない」
1
2
発達障害グレーゾーン

徹底した当事者取材! 発達障害“ブーム"の裏で生まれる「グレーゾーン」に迫る

おすすめ記事