雑学

外国人の「変な日本語」を笑っている限り、世界を相手に戦ったりできない――鴻上尚史

― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

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外国人の「変な日本語」を笑っている限り


 新宿を夜歩いていたら、素朴な英語で話しかけられました。

 アジア人の顔をした男性は、「自分のホテルが分からなくなった。こんな名前のホテルを知らないか」と不安げに「ロースホテル」という名前を連発しました。けれど、グーグルマップで調べても見つからず、彼は焦り、「フラワー、フラワー」と繰り返すので「ロース」のスペルは何だい?と聞くと「ROSE」だと言うので、「そりゃ、ロースじゃなくてローズだ。バラじゃないか!」とようやく場所が判明しました。

 すぐ近くだよと案内しながら、どこから来たのと聞けば、「昨日、ベトナムから」と言い、何しに来たの? 観光?と聞けば、コンビニで働くために来たと、日本人がよく知っているコンビニチェーンの名前を上げました。

「ベトナムで募集があったんだ。明日からトレーニングが始まるんだ」と、ベトナム人の若者は言いました。

 大変だなあと思わず声が出ました。

 昨今、コンビニの業務はどんどん拡大していて、銀行振込の代わりまでできるようになりました。

 現金以外の支払方法もどんどん増えて、「モノを売って、お金をもらう」なんてシンプルな労働から一番遠い「専門職」になったと言ってもいいと思います。

 そこに、外国人の店員さんが増えました。

 先日、コンビニで順番を待っていて、「ちゃんと日本語話せよ!」とお客さんが叫ぶ現場に遭遇してしまいました。

 こういう時、胸が潰れそうに痛みます。

 外国人の店員さんは、あたふたしていました。すぐに日本人の店員が飛んできて、対応を始めました。

「日本に来るんなら、日本語ぐらい話せるようになってから来いよ!」と叫んでいるお客さんを目撃したこともあります。

 こういう言葉を聞くと、僕は1年間のロンドン生活を思い出します。

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「日本語は内臓が5つある」

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この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録





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