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スポーツウェアの街着化はどこまで進む?

シルエット、色、素材をチェックしよう

 では何が普通と違うのか、どうしたらこうなるのかを解説します。
Y-3 OVERSIZE PARKA

Y-3 OVERSIZE PARKA
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 まずシルエットです。どうしてこれが高校生がはく普通のアディダスの3本線のトラックパンツの着こなしと違うのかというと、シルエットが今風のビッグシルエットとなっているということが、まず最初のポイントです。トップスはビッグシルエットをさらに強調させるため、コートとジャケットの重ね着です。これは今期、トレンドセッターのバレンシアガのメンズでも多く提案された、いわゆる上着の重ね着です。上半身にボリュームを出し、シルエットを膨らませることで、これが単に、たまたまトラックパンツをはいている人ではなく、トレンドを意識したトラックパンツの着こなしであるということがわかります。ですから、もし自分でもトラックパンツを今風に街着として着たい場合は、ビッグシルエットを意識するところから始めましょう。  次に色です。ネイビーと黒という、モードで多用される組み合わせを中心に、白のラインとアクセントに黄色という色遣いです。今回の秋冬のY-3は、黄色の小物を合わせるのがテーマの1つであったようで、黄色を入れていますが、これはもちろんネイビー、黒、白というように、3色だけでまとめても構いません。明るい色を入れ4色以上にすると、よりポップで若々しくなりますし、逆に色数を少なくすればシックになります。いずれにしても、色数は少なくするといいでしょう。  そして最後に素材です。トラックパンツと呼ばれるものには、ジャージーと呼ばれる編み地のものと、ポリエステルやナイロンでできた、少し艶があり滑らかな織り地でできたものとがあります。スポーツウエアを着て、それが「休日のお父さんが部屋着のままスーパーへ買い物に来た」ルックに見えるかどうかは、この編み地の割合のバランスによります。  西洋の男性の衣服の基本は「鎧」です。基本的に、柔らかい皮膚の上に、同じように皮膚のような柔らかい素材のまま家の外へ出ていくことをメンズの衣服では嫌います。スポーツウエアは、グラウンドやコートの内側という守られた世界で着用するものなので、この柔らかさの表出は問題ないとされますが、そんな守られていない世界へ、皮膚のような柔らかさのまま出ていくことは危険極まりないことなのです。  もしその柔らかい素材のまま外へ出るのならば、その下にある筋肉は甲冑のごとく鍛えられたものでなければなりません。それがメンズの衣服の美学です。
WEARより

WEARより

 スポーツウエアをグラウンドでもコートでも、家の中でもなく街へ着て出ていく場合、もし鍛えられた筋肉を持っていないのならば、ジャージー素材のアイテムは選ばないか、選ぶとしても最小限にしましょう。トラックパンツの場合も、ジャージーではなくポリエステルやナイロンの織り地ものを選べばいいでしょう。  シルエット、色、素材に気をつければ、スポーツウエアをおしゃれな街着とすることはできます。これからますますスポーツウエアの街着化は進みます。今のうちに習得しておきましょう。 小林直子
ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。新刊『わたし史上最高のおしゃれになる!』は発売即重版に。新刊『お金をかけずにシックなおしゃれ 21世紀のチープシック』が発売中
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