ネイビーばかり着る人でもオシャレに見えるコツ
【モードをリアルに着る!オム Vol.23/小林直子】
例えばグッチのアレッサンドロ・ミケーレが、男性にもビビッドなピンクや黄色のスーツやコートを着せたルックをランウェイで発表したとしても、実際にそんな色の服を着る男性は限られているでしょう。世界にはさまざまな色の服があるのに、男性はそれを選びません。なぜ選ばないのかというと、男性にとって衣服は自己表現や趣味嗜好の表明のために用いるものである前に、社会的な位置づけの表明であるからです。男性が派手な柄のピンクのスーツを着て街へ出るならば、それは、ああ、あの人って、そういう職業の人だからああいう服なのね、と思われ認定されることでしょう。ほとんどの男性は「そういう職業の人」ではなく、堅気のサラリーマンや自営業者なので、その社会の少数派の職業の人たちが選ぶような色合いの服はなかなか着られずにいます。そうしておのずと、男性の選ぶ色は限られてきます。
特に日本では、多くの男性が白、黒、グレー、ネイビーと、そして少しのカーキを着用します。もちろん中には赤や緑のコートを持っている方もいらっしゃるでしょうけれども、多くの男性のワードローブを見たならば、これら5色で事足りているでしょう。
そんな少ない色数の中で、しかもおしゃれに見せるためにはどうしたらいいかについては、少しばかりの工夫が必要になります。
その工夫のヒントとなるような、何かいいアイデアはないかと思って見つけたのがこのヴァレンティノのチャコールグレー+ネイビーのルックです。トラックスーツをどうやったらモードに落とし込むかがテーマのコレクション。ニューロマンティックで有名なアダム・アントのメイクと髪形に似せた美形モデルの皆さんが、既製服の中では最も豪華な素材と仕立てを用いて発表されるそのルックなど、多くの男性は関係ないよとお思いでしょうけれども、よく見てみれば、ごく一般の男性にも参考になることはあります。
ネイビーのウールカシミア素材の一重仕立てのテイラードカラーのロングコートにクルーネックのセーター、ジャージー素材のファスナーつきスウェットシャツ、サイドにラインが入ったウールのパンツ、白スニーカーという、テイラーリング+スポーツウエアのミックスコーディネートというこのルックは、アイテム自体は、コートについたパンクスタッズを除けばごく普通のアイテムであり形です。そのごく普通のアイテムを組み合わせ方、そして色合わせの妙でもってモードに仕上げています。
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ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。新刊『わたし史上最高のおしゃれになる!』は発売即重版に。新刊『お金をかけずにシックなおしゃれ 21世紀のチープシック』が発売中
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