クルマバカが選ぶ「平成のベストカー」は何? ゆく年くる年クルマ放談
――平成のニッポン自動車業界を簡単に振り返ってください。
清水:ナベちゃんはさ、平成元年当時レンタルビデオ屋でバイトしてたんだよね?
渡辺:ビデオ屋と建築事務所のバイトを掛け持ちしてました。大学通ってたはずなのに、なんであんなに働いてたんだろう(笑)。
清水:そのころクルマは?
渡辺:買えないす、絶対買えないす。
清水:オレのカーマニアライフは平成とともにあったな。今まで47台クルマを買ったけど、そのうち46台は平成に買ったんだよ!
――昭和に買った最初の1台はフェアレディZでしたっけ?
清水:日産サンタナ(笑)。
渡辺:昭和感があっていいすね(笑)。ボクは、平成の幕開けは、ディアマンテ(三菱/平成2年発売)からって感じがしますね。シーマ(日産/昭和63年発売)って意見もあるかもしれないけど。
清水:シーマはまだいちおう昭和でしょ。つまりバブル期。そのバブルとともに平成が幕を開け、フェラーリF40が2億6000万円まで跳ね上がり、しかしあっという間に大暴落した。オレは、ちょうどそのころ池沢先生にフェラーリに初めて乗せていただき、雷に打たれ……。
渡辺:感電しちゃったんですか(笑)。
――このまま話し続けると1冊の本になるくらいになりそうなので強制終了。次は平成のベストカーを選んでください。
渡辺:やっぱりR32GT-Rでしょう。
清水:その対極として初代プリウス。
――即答ですね。
清水:平成の名車といえば、この2台にとどめを刺すと言っていいよね。
渡辺:異存はないです。ボクは両方とも所有経験があります。正確に言うと、32は3か月くらい自分のビートと友達の32を交換してた。プリウスは人生で唯一、不見転で買ったクルマです。
清水:実はついこの間、久しぶりに32に乗ったんだよ。
渡辺:当時は我が物顔で振る舞う暴君だったのに、今乗ると華奢ですよね。ピラーなんか細いし、愛おしい感あります(笑)。
清水:かよわくて守ってあげなきゃいけない大事な宝物だよ、今は。32が出たころは、女のコたちもクルマに興味があったんだよ。
渡辺:たぶんGTS-tとGT-Rの見分け方、知ってましたよね。
清水:それは自分の価値に直結することだから。「GT-Rを乗りこなせる男なんてそうそういないわよ」なんてコが普通に言ってたからね。
――32といえば、清水さんには忘れられない逸話があるじゃないですか。
清水:そうだ! 32にはいい思い出があって(笑)。買ったことないけど、日産の広報車借りて首都高に自主取材に行ったとき、あおってきたAMGを八重洲トンネルで撃墜したことがあるんだよ。追っかけてきたAMGがコーナーでスピンして壁にクラッシュした。あれほど気持ちよかったことはないね。30年も前のことだからもう時効でしょ。
渡辺:当時は「アーマーゲー」って呼ばれてました(笑)。’90年前後の日本車は、海外のクルマより明らかに優れていましたよね。
清水:ジャパン・アズ・ナンバーワン! AMGを撃墜して実感したよ(笑)。そして真逆に反転してプリウスの世界になっていくわけだ。プリウスは世界を制したよね。
渡辺:プリウスの影響はいまもって続いているわけで、トヨタのハイブリッドより優れたシステムは、どこのメーカーも出せない。プリウスがあったとないとでは世界は変わっていたでしょうね。ボク個人は、プリウスのおかげでとばさなくなり、免許がキレイになりましたし(笑)。
清水草一&渡辺敏史が選んだ 平成のベストカー!
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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