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典型的な郊外の街、茨城県守谷市が世界のアーティストから注目される理由

現代アートはわからなくて当然

「アーカスプロジェクト」とは一体何なのか? 芸術に詳しい人にはよく知られている話なのだが、恐らく多くの人には馴染みのないであろう「アーティスト・イン・レジデンス」という活動を、現代アートの分野では日本で最初に始めた茨城県の文化事業である。細かい話はあとに譲るとして、もう25年も続いている「アーティスト・イン・レジデンス」の日本における老舗だ。  この「アーティスト・イン・レジデンス」とは、ざっくり言うと「芸術家が一時的に滞在して、何かを制作する」という芸術界では今や「当たり前」になっている芸術活動だ。「ざっくり」と書いたのは、実は世界には「芸術家を滞在させて、あえて何も作らせない」ことを大きな目的としているアーティスト・イン・レジデンス(アメリカの「エイペックスアート」)もあり、一口に「これが『アーティスト・イン・レジデンス』だ!」ということは困難である。まるで「現代アートとは何か?」と一言で説明するのが困難なのと同様に。ただ、言葉通り「芸術家が滞在する」ということだけは共通している。  世界各国には数多くの「アーティスト・イン・レジデンス」があり、文化庁が2013年に委託調査した報告書によれば、11か国を対象にした調査だけでも263件が見つかったようだ。そして、日本には60団体以上あると言われている。その形態も目的もまちまちなのだが、「アーカスプロジェクト」では、年間3人を公募し、毎年8月中旬から12月上旬の110日間、招聘している。

2018年に滞在制作したトルコのアーティスト、ジハド・ジャネル氏のプロジェクト
《飼い慣らせないモンスターをde-monsterする実演( 飼い慣らすデモ )》
撮影:加藤甫

「県の事業なのに、たったの3人を呼ぶだけなの?」と思うことなかれ。限られた予算の中で涙ぐましいほどの努力をしながら、地域の国際交流と文化のために、そして海外からやってくるアーティストのためにアーカスプロジェクトは奮闘を続けているのだ。 「現代アートって、わからなくて当然ですよね(笑)。例えば、私も藝大生だったときにデザイン科で抽象画を描いていました。で、アーカスでボランティアをしているときに、アーティストの方に『ここに大きな目を描いてほしい』と言われて、描いたんです。でも、描いたのは私なのに、そのアーティストの作品になっている。『それが現代アートか?』と当時は思いましたよ。でも、『市民の方にもっとアートを身近に感じてもらう』ためのプログラムなどを通じて、『芸術ってもっと、こういうふうに面白いんだよ』と伝えることで、人の目線を変えることができると思っています」  そう語るのはアーカスプロジェクトのコーディネーターの一人、石井瑞穂氏だ。彼女は1997年にアーカスのボランティアスタッフになり、断続的にこの事業に関わってきた。そして、2012年からはアーカスに携わる茨城県の嘱託職員となり、2013年からは「アーカスプロジェクト実行委員会」の職員になった。アーカスプロジェクトがプレ事業として発足したのが1994年なので、かなり初期からこの事業を見てきている。
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コーディネーターのすさまじい奮闘ぶり
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