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キンコン西野の新作はAmazon総合1位。作家でも大成した芸人たち

劇団ひとり:憑依芸が活きた? 6人の落ちこぼれの復活を描いた感動オムニバス

 多彩なキャラクターになりきった濃厚な世界観のコントが大人気のピン芸人・劇団ひとり。彼もまた作家として活躍する芸人である。そんな“憑依芸人”とも呼べる彼の代表作が、2007年の『本屋大賞』にノミネートされ、2008年には映画化もされたオムニバス小説『陰日向に咲く』だ。
陰日向に咲く

表紙には劇団ひとり本人が登場している。ちなみに映画版の主演はV6の岡田准一(幻冬舎刊『陰日向に咲く』表紙)

 社会の束縛に苦しんでいたサラリーマン、鳴かず飛ばずのマイナーアイドルと彼女を追い続けるアイドルオタク、平凡な日常に退屈していた20代の女性、35歳でギャンブルと借金まみれの男、とある芸人に惚れ込み彼をスターダムに押し上げることを決意した少女。そんな落ちこぼれ6人が社会復帰を目指し……というのが大まかなストーリー。  複数の役になりきる芸風の劇団ひとりだが、彼の役に対する作り込み力は、そのまま小説のキャラクター作りに一役買っているのは間違いないだろう。2008年には54刷という驚異の増刷を経て、100万部突破の大ベストセラーになっている。小説家の恩田陸、作家でありミュージシャンの大槻ケンヂ、芸人の太田光など多くの著名人から高い評価を受けているのである。

太田光:いつもの彼の毒舌からは想像できない、やさしい大人のための童話集

 劇団ひとりに高い評価を与えていたお笑いコンビ「爆笑問題」の太田光も、2010年に小説『マボロシの鳥』を発表している。普段から映画鑑賞や読書が趣味という太田は、以前からエッセイなど多くの著作を残しているが、小説家としては『マボロシの鳥』がデビュー作だ。
マボロシの鳥

太田はかなりの読書家で、年間100冊も本を読むそうだ(新潮社刊『マボロシの鳥』表紙)

『マボロシの鳥』は、舞台芸人の一瞬の輝きを描いた表題作や、父親との関係に悩む娘、いじめに悩む男子高校生の葛藤を描いた話など、「生と死」「孤独」「愛情」をテーマに複数のストーリーが収録された短編集。  いつもは毒舌や社会風刺などキレキレの芸風が特徴の太田だが、意外にも繊細な性格だとも言われている。そんなセンシティブで知的な太田の性格が本作には込められており、シンプルな文体と合わさり独特な世界観を生み出しているのだ。
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サブカル趣味が炸裂した小説
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