更新日:2023年03月22日 09:30
エンタメ

『ゴジラ』ハリウッド版に出演、渡辺謙・60歳が語る「年齢に縛られない生き方」

役を生きている間は時間がスローになる

――渡辺さんが『ラスト サムライ』(’03年)に出られたのが42歳のとき。40代で未知の領域に飛び込んだ心境についてお聞かせください。 渡辺:まず、人間それぞれの個体を生年月日でくくってしまうのはどうなんだろうって僕は思ってます。年齢で区切るという固定観念に縛られている人もいるだろうし、自分で老けたって思い込んでしまう人もいる。ただ、僕らのような仕事をしている人間って、魂も含めて、どこか自分の肉体を作品に貸している感覚なんですよ。『2001年宇宙の旅』ではないけど、作品の中では普通の人間が老化・経年していく速度と違うところで生きているような気がするんです。 ――具体的にはどんな感じですか。 渡辺:その役を生きている間は時間がスローダウンしているみたいな感覚になることがある。俳優って割と押し並べてみなさん年齢より若く見えるじゃないですか。それはただ気が若いとかいうよりも、クリエイトするときの発想として、何か通常とは違うムーブメントが脳内にあったり細胞の中にあったりするんじゃないかなって。まったく医学的・科学的な根拠はありませんが、だから常に年齢よりも若く見えたりするんじゃないかと思うんです。 ――数字で人を測ったり、一般的な尺度で安易にレッテルを張ったりすることは違うのではないかと。 渡辺:そうですね、一般的な人にとっても、もはや「年齢」という尺度であれこれ測るのは意味のないことだと思う。僕らはどこか演じる役を鏡にして自分の人生と向かい合わざるを得ないところがあるけど、一般的にはどうなんだろう? 組織的な部分で言うと、どこかでラインを引かないといけない面があるのもわからなくはないですが、そもそも人間に「線」を引くっていうのは難しいことですよね。 ――これまで当たり前のようにされてきたことや価値観に限界が近づいてきているかもしれない。 渡辺:今はボーダー期なんじゃないでしょうか。そういう一義的な価値観だけでは測れないっていう人たちと、そうやって生きてきてしまった人たちとの間での二極分化みたいなところがあるんじゃないかな。年齢でラインを引くということは正解だとは思いませんが、ある種、究極の選択を迫られているわけじゃないですか。その価値観がこれからどうなっていくんだろう?という微妙な不安感はありますね。  先日、テレビを見ていたら、若者が「大学に合格が決まったときが人生の中で一番のピークだった」みたいな話をしていて「そんなもんなのかなぁ?」と思ったんですよ。僕はつい最近も涙を流すくらい嬉しいことがありましたから、人生ってたった一回しかピークが来ないもんなのか、って少し疑問に感じたんです。僕が単に多感なのかもしれませんが。 ※5/28発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです 【渡辺 謙】 ’59年、新潟県生まれ。’03年、『ラスト サムライ』でハリウッド進出。以降『バットマンビギンズ』『SAYURI』『硫黄島からの手紙』『インセプション』『GODZILLA ゴジラ』『名探偵ピカチュウ』などに出演。国内にとどまらずワールドワイドな活躍を続けている 取材・文/中村裕一 撮影/八尋研吾 ヘア&メイク/筒井智美(プシュケ) スタイリング/馬場順子 衣装協力/BRUNELLO CUCINELLI 、Cartier
株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter
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週刊SPA!6/4号(5/28発売)

表紙の人/ 吉岡里帆

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