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『ゴジラ』ハリウッド版に出演、渡辺謙・60歳が語る「年齢に縛られない生き方」

 5月31日から公開されるハリウッド映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に、前作から引き続き芹沢猪四郎博士として出演している俳優・渡辺謙。本作ではゴジラはもちろんキングギドラ、モスラ、ラドンと、読者にも馴染みの深い巨大怪獣たちが勢ぞろいし大暴れを繰り広げる。1954年の誕生以来、社会問題や環境問題などを反映し、いわば“時代の映し鏡”とも言えるゴジラ。圧倒的なスケールで迫る怪獣たちと対峙した彼はその姿の後ろに何を見たのか? 60歳を迎える一人の人間としての人生観を覗いてみた。

撮影/八尋研吾

非常に含蓄のあるテーマを含んでいる作品だと思います

――今年で65周年のゴジラですが、渡辺さんが今回の作品から受け取ったメッセージは何でしょう。 渡辺:前作から通底していますけど、未知なる怪獣を人類の英知でコントロールしようとする発想がまずあるわけじゃないですか。それって現代社会に置き換えると、AIとかテクノロジーとかに当てはまるのかなと。おそらく人間の役に立っていくであろう、とみんな思っているんだけど「もしかしたらこのまま立場が逆転してしまうんじゃないか」という、言い知れない内面的な不安とリンクしていくというか。 ――純然なエンターテインメントでありつつ、極めて現代的な問題が内包されていると。 渡辺:環境破壊に関しても、さらにそれを推し進めていくのか、それともここで歯止めをかけるのか、みたいなところも人類が今抱えている課題であり、そういうところとも関係していくと思う。科学者たちが理想を突き詰めようと苦悩する姿を通じて、怪獣映画でありながら現代人が抱えている問題にも一石を投じている気がしますね。 ――その一方で、人類がまったく歯が立たない強大な力を持った怪獣たちが都市を破壊するさまを見て、シンプルな「恐怖」を感じました。 渡辺:言ってみたら自然災害とかもそういうことですよね。アメリカだとハリケーンがあるし、日本でも台風や地震、それに伴う津波もある。いろいろな知恵やテクノロジーを使いながら防災したり減災したりしているけど、突発的に起こる人知を超えた災害っていうのは、いまだにどうやってもコントロールできない。その意味で非常に含蓄のあるテーマを含んでいる作品だと思います。 ――文明の在り方そのものを問われるというか、我々一人一人はどうすればいいか考えさせられました。 渡辺:問題を複雑にしすぎると「解決策はありません」という結論になってしまいますが、やはり一つ一つ目の前の悩ましい出来事に対して、どうやって僕たちが取り組んでいけばいいかを考えるしかない。この映画を見て人類や文明について考えてくれ、なんてことは言いませんが、一つの問題提起にはなるんじゃないかな、とは思っています。開けると怖い“扉”になりそうですが……。 ――それともう一つ、怪獣の戦いと対比して描かれていた家族の絆に胸を打たれました。 渡辺:でも、単純な家族愛の話ではないですよね。夫婦でも対峙し、親子でも対峙し、それぞれがそれぞれに傷を負う。けれども、それがある種、お互いを思う気持ちでもあったりするわけで、そのへんはとてもうまく構図として描かれている。再撮したシーンも多かったし「こんなのスクリプトにないじゃん」みたいなものもいくつかあった。監督を含め、そのへんはエンターテインメントに対する執念というか、「もっといいものを作りたい!」という強い思いを感じましたね。
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