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「痴漢には安全ピン」論争で考える、安全な痴漢対策ガジェットとは

位置情報が送信される防犯ブザー

 「女性の安全」という視点で考えるならば、アメリカはやはり日本よりも数歩先を進んでいる。というのも、この国には女性を対象とした警備企業が存在するからだ。  ペンシルベニア州フィラデルフィアに拠点を置く『ROAR for Good』は、近年特に注目されている企業。CEOのヤスミン・ムスタファ氏はクウェート生まれの女性で、湾岸戦争の際に難民としてアメリカへ移住した。性暴力の恐怖がわかっている人物である。  ROAR for Goodが現在販売しているのが『Athena』という製品である。これは一見、何に使うのか想像し難いものであるが、要はスマート防犯ブザーだ。
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画像は、ROAR for Goodのサイトより

 Athenaの本体表面にあるボタンを3秒長押しすると、85dBの大音量でブザーが鳴る。それだけではなく、予め登録している家族のスマホに位置情報付きの通知が送信されるという仕組みだ。  アラームを鳴らさず位置情報を送信したいときは、ボタンを長押しではなく3回連続で押す。これはたとえば、夜道を歩いている時に相手に悟られず危険を共有するという場面で使える。  このAthenaがクラウドファンディング『Indiegogo』で資金調達を行ったのは2015年。今ではビジネスモデルとして軌道に乗っているようで、ムスタファ氏はTEDカンファレンスにも登壇している。

アクセサリーを2回プッシュで警察に通報

 もうひとつ、やはりIndiegogoで資金を調達した『invisaWear』をご紹介しよう。これは前述のAthenaのように、位置情報通知機能を組み込んだスマートジュエリーである。14金とシルバーの2種類を用意しているが、危険を感じた時に表面を2回押せば通知機能が作動する。
 Athenaのようなアラーム機能はないが、その代わり911(日本で言う110番)に接続できる。慌てている時にスマホを操作できるかと問われれば、なかなか難しいだろう。その問題を解消したのが本製品である。  もちろん、この警察通報機能はアメリカ国内のみでの対応である。が、このような製品が既に登場しているという事実は日本にも多大な影響を与えるのではないか。  以上、性犯罪に対処するためのグッズを取り上げた。痴漢が社会問題になっているのは当然日本だけではなく、世界中でその対策が議論されている。最近ではスマホとオンライン環境を利用した防犯ガジェットが充実するようになった。逆に言えば、もし痴漢行為を犯した場合は最終的に逮捕される可能性が高くなったということだ。痴漢という卑劣な犯罪が根絶されることを願う。<文/澤田真一>
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー
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