更新日:2023年03月28日 09:46
ライフ

「ゴキブリを持ったまま土下座させられた」横暴な客に泣く店員たち

立場の弱い店員をサンドバッグ扱い

 一方、カスハラ加害者側はどういう気持ちなのか。カスハラをしている自覚があるという山川翔太さん(仮名・30歳)はこう言う。 「相手は店員なので、キレて殴りかかってくる心配はほぼない。少しでもミスや失礼なことがあれば、溜まったストレスをぶつけるサンドバッグにします」  こんな歪んだ思考を生んだきっかけは、山川さん自身がカスハラを受けていたからだという。 「居酒屋でアルバイトしていたときにヒドい客が大勢いることを痛感しました。それに応えてきたんだから、自分が客のときは同等の主張をしたい。店員から『お許しください。今回のお代はいただきません』と言われたときは、特別なプレゼントをもらった気分です」  また、コールセンターの相手を泣くまで問い詰めたことがある塩田武さん(仮名・36歳)は、当時の心境をこう振り返る。 「仕事やプライベートがうまくいかないと、つい正当に怒ってもいい相手を探してしまうんです。ずっと家にひきこもっていたので、誰かとしゃべりたい気持ちもあったのかもしれない」
カスハラ

カスハラ加害者の塩田さんは「コールセンターの無機質な対応にイラつくことが多い」と言う

 実際、カスハラは暇を持て余した中高年男性が加害者になりやすいといわれている。そんなカスハラと正当なクレームを見分けるには、どうしたらよいのか。数多くのカスハラ案件を処理してきた弁護士の石崎冬貴氏は言う。 「ケース・バイ・ケースなので明確な線引きは難しいですが、話が堂々巡りになったり、具体的な要求もなく怒り続けていたらカスハラの合図と判断していいでしょう」  “お客さまは神様”という日本的な考え方は、もはや時代遅れなのかもしれない。
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