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<純烈物語>“日本一ヘタな”「ラブユー東京」を唄う理由<第2回>

酒を食らう年配男性の前で唄っていて気づいたこと

 常連になるほど新鮮味が薄れていくのは何に対しても言えること。だから酒井は、ずっと見続けている人との関係性の中で、勝負を仕かける。「この変化に気づくか?」といった、より一歩突っ込んだ持ち球を投げるのだ。  酒井が自身の肥満をネタにし「豚」と言い切るのも、初期に目の前へ広がっていた情景からつながっている。若いオーディエンスが皆無の中、酒を食らう年配男性の前で歌ってきた。その会話に耳をそばだてると、みな自虐話をホステスに振っていた。 「年を取っている人たちが一番自虐しているんですよ。老いていくとか、病気になるとか、そういうことしか話していない。だったら、みんなが考えていることを僕らが口にすることで共感してもらえるだろうと。そういう意味では、お客さんに教わっていることがたくさんありますよね。  見ているだけじゃお客さんが何を考えているかなんて、本当のところはわからないはず。スーパーを切り盛りする店長が、買い物しているお客を見て家族構成とかを想定して、どれをサービス品にするかを考えるのと同じ」  加えて、子役の頃から業界を経験しモテるシチュエーションが当たり前だった酒井は、そちらで勝負したところでもっとモテて評価される俳優がいくらでもいる現実を、早くから理解していた。そして逆転の発想から「芸人枠以外でブサイクをちゃんとプロデュースして売っているプロダクションがゼロ」であることに気づく。  自身を豚呼ばわりすることで、酒井は純烈としてその枠を手に入れる。もともとムード歌謡グループとしたのも、現代の音楽シーンで比較的空き家となっていたのが大きかった。  こうして酒井は、オーディエンスそれぞれが欲しがる球質で言葉を投げまくる。だからメンバーとしゃべっていても、気持ち的には「ボールを壁当てしているようなもの」となる。  そうした繰り返しの中で築かれてきた作品だけに、自然と4人の立ち位置が確立されている。もっとも若い後上を酒井がいじり、女性人気の高い白川は艶のあるボールを投げる。  そして全体を見ているのが最年長の小田井で、話が進む間にもそれとは違う世界を意識し、よきタイミングで「ところでさあ」という感じに次へとつなぐ。4人体制になって5か月で、このフォーメーションを自然体のものとなるまでに磨き上げた。  それは、12年間の中で音楽と同等に言葉とも向かい合ってきたから。純烈を地味な唄を地味に歌うだけのグループと決めつけていたら、この現象の“本性”は見えてこない――。 (つづく)※この連載は毎週土曜日に更新予定です 撮影/ヤナガワゴーッ!
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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