さぁ、そろそろ目的の「スナック 八重」に向かう頃合いだろう。ここからしばらくは、長めの距離を黙々と歩く。 　ここ、なんと、清野さんと池川先生が初めて待ち合わせした場所だそう。 　そして…… パリッコ：さっき看板を見つけた瞬間は、来たことのない僕までなんだか感動してしまいました。 清野：もはや存在などしてるわけないと勝手に思っていたので、当時のまんまで営業している姿にゾクゾクしますね。店の周辺の雰囲気も変わってなかったし、当時と今が一瞬で繋がった感じがして。扉を開けたら、池川先生が普通に飲んでるんじゃないかって（笑）。 パリッコ：いい話！ 女将さん、清野さんのこと覚えてくれてましたね。 清野：本当に覚えてるのかな？ という疑念はまだありますけど（笑）。だって、16年前に小一時間ほど飲んだだけですよ？ まぁ、もし覚えていなかったとしても、覚えてる体で温かく迎え入れてくれる店だからこそ、いまだにこんなに大盛況なんでしょうね。 パリッコ：いやいや、あの池川先生が連れてきた若い男、それも漫画家ということで、印象深かったに違いないです。 清野：ですかね。それにしてもさっき女将さん、先生のことを「池ちゃん」って呼んでたでしょう。貸本漫画界伝説の巨匠をちゃん付けで呼べる人って今現在何人いるだろうって、微笑ましかったです。