更新日:2023年03月28日 10:53
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東京五輪チケット高額転売の裏側。開会式A席は144万円も!

不正転売は果たして実現可能なのか

 早くも転売市場が形成されつつあるが、「焦る必要はない。当日、必ずダフ屋が出ますから」と話すのは冬季五輪を中心に過去5大会を観戦したという五輪マニアのEさん(40代・男性)だ。 「席数の少ない室内競技の決勝や、地元のスター選手が出場する試合は別として、どの大会もダフ屋が必ず競技場周辺に出没します。3年前のリオ大会でも陸上競技の予選チケットは競技場の入り口でダフ屋から買いました。警察や警備員も見て見ぬふりでしたよ。期間中はテロや事故を防止するのが最優先になるので、東京五輪も同じようになるでしょう」
チケット転売

北京五輪でEさんがダフ屋から買った柔道のチケット。身分証確認などはなかったという

 ’04年のアテネ以来すべての夏季五輪大会を現地取材している、スポーツジャーナリストの栗原正夫氏はこう話す。 「チケットの転売対策強化は毎大会のように言われることですが、あくまで転売業者をけん制するのが主な目的。というのも、あまりにも転売を厳しく取り締まって、空席が目立つようなことになればIOCから怒られてしまう。昨年の冬の平昌大会を取材した際には、不人気競技のチケットを無料配布して観客を動員し、空席を埋めたという話も聞きました」  同様の事例は’12年のロンドン大会でも起きている。チケットの事前抽選販売の競争率が非常に高く、多くの市民が入手できない状態だったにもかかわらず、多くの競技で空席が目立ったという。そこで危機感を抱いた組織委は、五輪の警備に携わる英軍兵士や、地元大学生を無料招待の“動員”をして席を埋めたというのだ。  組織委が何としても阻止したい不正転売は果たして実現可能なのか。紹介したような転売事情を見ると、甚だ疑問ではある。
チケット転売

※東京2020公式チケット販売サイトより

過去大会のチケット事情

●北京(’08年) 実名登録制で販売されたが、開会式は最高325万円で転売されたという。各競技の予選についてはダフ屋が横行。当局も黙認状態で実名登録制は無意味だった。 ●ロンドン(’12年) オンライン購入の不具合による発券ミスが続出。売り切れにもかかわらず空席だらけの競技が出るなど問題が多かった。不人気競技では正規の当日券も相当数あった。 ●リオ(’16年) 地元マフィアによる大規模なダフ屋が暗躍。開会式が8倍の値段で転売されたという。加えてIOC理事による大量不正転売も。当局も積極的に摘発しなかったという ●平昌(’18年) チケット販売率が9割を超えたと組織委は発表したが、空席が目立つ競技も。こちらもダフ屋が横行。人気の高いフィギュアの決勝チケットは60万円近くで転売された。 <取材・文/奥窪優木 青山大樹 写真/AFP=時事> ※週刊SPA!7月23日発売号「五輪チケット高額転売の裏側」特集より
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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表紙の人/ MIYU

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