更新日:2023年04月19日 20:51
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年齢不詳の熟女とスナックで踊った「品川区戸越銀座」の夜/清野とおる×パリッコ

「戸越八幡神社」から「やきとり すゞめ」

 ふらふらとあてなく徘徊していた我々がやがてたどり着いたのは、その起源を1526年(大永6年)にまでさかのぼるという、「戸越八幡神社」だった。土地の神様に出会ったからにはお参りをしないわけにはいかない。あとから振り返ってみれば、この出会いが、我々と戸越という街の関係をより親密にさせてくれたことは間違いなさそうだ。
戸越銀座商店街

「戸越八幡神社」

戸越銀座商店街

「本日は街におじゃましております」

戸越銀座商店街

厳かな夜の参道

 全員がお参りを終え、参道を引き返そうとすると、この日の天気から考えるとちょっと普通じゃない強風が参道を吹き抜け、それは我々が境内から出るまで止まることがなかった。  清野さんが言う。「そういえば、参拝直後の風は神様からの好反応、みたいな説を聞いたことがありますよ」。よし、今夜はその説を全面的に信じることにしよう。  その後、何者かにいざなわれるかのようにたどり着いたのは、戸越公園駅近くにある一軒の焼鳥屋「やきとり すゞめ」。今日はすでにけっこうな時間徘徊を続けているが、あきらかにこれまで出会ってなかったタイプ。古くて渋い、我々好みの大衆酒場だ。
戸越銀座商店街

「やきとり すゞめ」

戸越銀座商店街

「こののれん、いいな〜。欲しいな~」

戸越銀座商店街

あらためて、乾杯!

 そこは、物腰の柔らかい女将さんがひとりで切り盛りする、昔ながらの焼鳥屋だった。少々雑多な店内は、最高に居心地が良い。  先客は年季の入った常連風の女性ひとり。店内には女将さんとその女性の会話、そしてTVの音だけが流れ、おだやかな空気に、それまで若干こわばっていた心がすうっと溶けてゆくようだ。  聞けばさっきの魅力的なのれんは、もとは近所にあった別のお店のものだったそう。女将さんはかつてその店の常連で、ご主人が体調を崩して閉店を決めた際、その店名と想いを受け継ぎ、ここで新しく店を始めたのだとか。
戸越銀座商店街

貴重なエピソード、ありがとうございます

戸越銀座商店街

カウンターの下に脈絡なく置かれた日用品に「生活」を感じ癒される

戸越銀座商店街

東京銭湯の公式キャラクター「ゆっポくん」のタオル

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ユニクロ線

戸越銀座商店街

もつ焼きのおまかせ盛りあわせ

パリ:あぁ、落ち着くな~。雰囲気だけじゃなくて、もつ焼きの焼き加減、塩加減が完璧で、超うまいっす。ただ、さっき女将さん、「私、肉が食べられないから、味見できないのよ~」って言ってたけど(笑)。 清野:ただものじゃない。期待値を下げといて確実に美味いものを出す心理テクですかね(笑)。ところでパリッコさん、突然なんですけど、この店での取材交渉、俺にやらせてもらっていいですか? パリ:え? もちろんですけど、なぜ急に? 清野:パリッコさんや井野さんがグイグイ取材交渉してる姿を見て、よくできるなあと毎度震えながら感心してたんですけど、なんだか挑戦してみたくなって(笑)。 パリ:でも百戦錬磨の清野さんからしたら、お茶の子さいさいですよね。 清野:いやいや、こういうの、週一くらいのペースでやり続けないと、すぐに元の小心者に戻っちゃうんですよね。最近飲み歩くのはこの「赤以外」くらいなので、ただ百戦しただけの無能な男ですよ。  突然そんなことを言いだした清野氏だったが、はたして……。
戸越銀座商店街

女将さんと常連さんの会話に絶妙なタイミングで割って入り、

戸越銀座商店街

めちゃくちゃ仲良くなってしまうのだった

 さすが清野とおる。
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ついに出会えた、戸越銀座の夜の素顔
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1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。X(旧ツイッター):@paricco

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