怒号と絶叫が飛びかった「足立区青井」の一夜/清野とおる×パリッコ
「東京都北区赤羽」シリーズの大ヒットで知られる漫画家、清野とおると”赤”以外の色が付いた名前の街で飲んでみようというこの企画。前回の「白山」に続き、ターゲットとなったのは――。
<※本記事は雑誌『酒場人vol.2』(オークラ出版、2016)に掲載された記事。お店の情報は当時のものです>
パリッコ(以下、パリ):清野さん、第2回目を企画するにあたり、何日か前から地図をず~っと眺めてたんですよ。そしたら、赤羽から東へ9kmほど行ったところに、「青井」って駅がありました。
清野とおる(以下、清野):青井? 聞いたことないですね。
パリ:ですよね。な~んか怪しくないですか?
清野:怪しいです。青井しかない! 青井に行きましょう!
パリ:そうしましょう!
清野:……しかし“青井”かぁ~(笑)。
パリ:“青井”(笑)。
という、住民の方に聞かれたら憤慨されかねないやりとりを経て、乗り慣れない「つくばエクスプレス」を利用し、初上陸の青井へとやってきた清野さんと取材班。駅を降りて地上に出た我々を待ち受けていたのは、閑散とした街並みと、衝撃の駅名表示板だった。
清野:いやいやいや、赤っ!
パリ:真っ赤ですね。
清野:これきっと、青井駅職員による渾身のギャグですよ。
パリ:「逆に赤くしません?」って。
清野:駅長が「う~ん……」て言ってるところ、勢いのある若手あたりが。「絶対ウケますよ! 乗車率上がりますって!」(※つくばエクスプレスの駅名表示は、基本赤いそうです)
パリ:(笑)。
まずは空腹と寒さから逃れるため、「青ちょうちんだったらおもしろかったのに」などと文句を言いながら、駅から一番近い某赤ちょうちんへ入ってみる。
パリ:カウンターのみのお店かと思いきや、奥に個室があるんですね。これは落ち着くな~。
清野:お、生ホッピーがある! 珍しいですね。俺、好きなんですよ。
パリ:ここは、もつ焼き屋みたいですね。ちょっと大将がコワモテで緊張感ありますよね。
清野:でも千葉真一っぽくてなかなかかっこいいですよ。
無事、乾杯を終えた我々は、メニューの吟味にかかる。
パリ:前回の「白山編」では“白”にちなんで、もつ焼きの「シロ」とか、おでんの「はんぺん」とか頼みましたけど、今回は難しいですね。
清野:う~ん……あ! 「ぬか漬け」の“漬”っていう字の中に、“青”が入ってますよ!
パリ:ご、強引!
険しい表情でやってきた大将に、慎重に注文をしてゆく我々。「ぬか漬け」に、清野さんの好物の「ねぎ焼き」、そして「もつ焼き」を数種類。
大将:味付けはどうします?
……ここでのミスが命取りになりかねないと緊張感の走る中で、清野さんが口を開く。
清野:大将にお任せってできますか?
清野とおる、「青井」に初上陸
まずは青井駅前の“赤ちょうちん”居酒屋に
1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。X(旧ツイッター):@paricco
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