年齢不詳の熟女とスナックで踊った「品川区戸越銀座」の夜/清野とおる×パリッコ
今年、「東京都北区赤羽」シリーズを完結させた漫画家、清野とおる氏と、古くからの飲み仲間である、酒場ライターのパリッコ。ふたりが「赤」以外の色の名前がつく駅や街で、ただ飲み歩くという当連載。初回は東京都葛飾区「金町」を舞台に、清野氏の赤羽以前の歴史をひもとく貴重な回となった。
さて、今回は続く第2回目。「金」とくれば、次は当然「銀」だろう、というわけで、東京都品川区にある、東急池上線「戸越銀座駅」にやってきた。
【過去記事】⇒時空を超えた「無縁坂」。葛飾区金町を清野とおる×パリッコが歩く
ここはなんといっても、「戸越銀座商栄会商店街振興組合」「戸越銀座商店街振興組合」「戸越銀座銀六商店街振興組合」の3つの商店街振興組合からなり、関東でも有数の長さを誇る「戸越銀座商店街」を擁する街。古くからの商店街が大好物の我々にとって、期待値の高まるところだが、はたして……。
パリッコ(以下、パリ):最近よく感じることですが、駅前エリアが再開発されると、すごくきれいな街並みになる一方で、どこか画一化され、それまであった個性が薄れてしまうことも多い気がしますよね。ここ「戸越銀座商店街」も、ぱっと見かなり新しいお店が多い。
清野とおる(以下、清野):実は僕、初めて来たんですけど、もっと新旧入り混じりのとっちらかった雰囲気を想像してました。確かに、駅舎もシックで和モダンな佇まいだし。
パリ:あの駅舎、すっごくかっこいいけど、老朽化が問題になっていたという以前の駅舎も味があったんでしょうねぇ……。って、我々は外部の人間だから好き勝手言ってるだけですが(笑)。
清野:そうそう。大多数の人にとってはいいことだし、「褒め」要素なんですよ。ただ、今こうして駅前をぱっと見渡してみたところ、僕たちのような外部の人間が興味を惹かれるディープ物件はなさそうですね。
と、いつも通り好き勝手言いながら、街の徘徊をスタート。幸いなことに、長い長い商店街には無数の横道も存在している。そこでまずは駅を出て1本目、線路沿いの横道へ入ってみると、さっそく良いシチュエーションの赤ちょうちんを発見!
パリ:吸い込まれるように入ってしまいましたが、ここもけっこう新しそうなお店ですね。でも、普通に超~良いお店! このぬか漬けの漬かり具合、絶妙すぎるし、添えられた化学調味料が泣けます。こういうの目の敵にする人もいるけど、大衆店はこの気どらなさがいいんだよな~。
清野:外飲みできるのが楽しいですね。酔っぱらったらジョッキを戻すのにも一苦労しそうなカウンターの狭さが妙に落ち着く。それにここ、裏道のわりにけっこう人通りがあるじゃないですか? 若い女性に横目で飲酒してる姿をチラチラ見られながら飲むの、最初はただただ恥ずかしかったけど、だんだん気持ちよくなってきましたよ(笑)。
パリ:はは。羞恥心をくすぐられながらの酒(笑)。清野さん、意外と人の視線とかは気になりますか?
清野:地元じゃ絶対できませんよ。知り合いのいない街ならではのお楽しみですね、これは。
パリ:ダンゴに生ピーマンとマヨネーズだって! これは珍メニューですね~。
清野:みたらしダレとマヨネーズのハーモニー? 想像できませんね。頼みましょう!
パリ:はは。そりゃあそうだ。つくねとか肉団子を「ダンゴ」って称する焼鳥屋とかもつ焼き屋、あるある。
清野:完全に勝手に勘違いした我々の責任です。
パリ:しかしこれまた、めちゃくちゃいいつまみになりますよ!
正しく良い酒場で人心地つき、店を出た我々。こんどは東急池上線の線路を東口側にわたってすぐの薄暗い路地にある、こんな店が気になった。
清野:お、この店。この看板。このエントランス。何か感じません?
パリ:ビンビンにオーラを放ってますね~。
清野:僕には、「もしこの先にキミらお望みの店がなくても、最後にウチに寄れば大丈夫だから」というメッセージがはっきりと聞こえますよ。
パリ:よし、ここ、最後に寄る店に決めましょう!
無事本日の最終目的地が決まったところで、さらに街を徘徊する。
人々の視線がクセになる外飲みからスタート
1軒のスナックを終着駅に設定し、夜の街を徘徊
1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。X(旧ツイッター):@paricco
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