更新日:2019年12月06日 14:59
スポーツ

骨が折れても戦う…世界一危険な格闘技「ラウェイ」に挑み続ける男

他の日本人が逃げたから俺がやるしかなかった

――もともとはMMAの選手でしたが、なぜラウェイに? 渡慶次:MMA時代は殴り合いを身上にしていたので、「試合は面白い」とは言われたけど、正直勝ったり負けたり。子供もできてしばらく休んで、復帰したときは嫁に「30歳までに食えるようになれなかったらやめる」って言っていました。  そんな頃、所属ジムの会長から「ラウェイのオファーが来ている。相手は無敗のチャンピオンらしいけど、やるか?」って言われて。ファイトマネーを聞いたら、それまでの11試合の合計より高かった。1試合で数十万円、MMAの試合から一桁上がったのが決め手でしたね。 ――正直、“かませ犬”的な意味合いだったのでしょうか? 渡慶次:まぁ、あると思いますよ。トップ選手がみんな断るから、僕にお鉢が回ってきた。過去、日本人も何人か挑戦していましたけど、みんな一試合で心が折れることが多かった。危険すぎるから本来はずっとやる競技じゃない。僕だって初戦は死にかけですもん(笑)。 ――死にかけとは? 渡慶次:相手が無敗のチャンピオンで強かったっていうのもあるんですけど、頭突きをくらい、素手で殴られ、鼻血が止まらなくなった。面倒くせぇ!と鼻をかんだら血管破裂したみたいで、原形をとどめないほど腫れ上がって結果敗戦。その顔をフェイスブックにアップしたら「とんでもないヤツがいる」「狂っている」と全世界に拡散されました(笑)。 ――普通なら、一試合でやめそうですよね。 渡慶次:でも、お客さんはすごく盛り上がるし、反響がすごかった。ボコボコにされた試合映像はYouTubeにも上がっていて、すぐに再生回数20万ぐらいいきました。結局こうやって表現の仕事をしている以上、注目を浴びることが対価ですし、ファイトマネーもいいですから。  それで意気揚々と次も出たら、頭突き一発で8針縫うぐらい切れて、1ラウンドで終わっちゃって。悔しくなって「もう一回出させてくれ!」って頼んで連続で出るようになって、現在は11戦無敗。75㎏級の王者にもなれました。 ――噂は本場まで届いたそうですね。 渡慶次:はい、ミャンマーでのビッグマッチにも呼んでもらえるようになりました。でも、本場初戦は現地の“水”でお腹を壊して最悪の状態。気合でリングに立つも、1ラウンドの最初に一発パンチをもらってしまい失神してタイム。「このままじゃ日本に帰れねぇ!」って思って逆に失神させたら、相手もタイムで復活。結果、5ラウンド引き分けでした。僕は何にも覚えてないんですけどね(笑)。  おかげでミャンマーでも僕の試合は地上波の生中継で放送されていますし、街を歩けば指をさされます。もう外国人枠じゃなくて、相撲でいう朝青龍みたいな立場です。ミャンマーの人から「渡慶次は狂っている」って言われ、現地の記者からも「バーサーカー(狂戦士)」なんて異名も貰いました。

試合では渡慶次選手の“ゾンビ”と言えるしつこさに、対戦相手の闘志が削られていく……

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