骨が折れても戦う…世界一危険な格闘技「ラウェイ」に挑み続ける男
世界一危険な格闘技「ラウェイ」。リングでは選手が素手で殴り合い、ヒジ打ち、頭突き、金的、失神しても立たされ、戦うことを促される。そんなラウェイで、折れた拳を握りしめて戦い続ける日本人がいる。渡慶次幸平、31歳。彼はなぜ、世界一危険な格闘技に挑み続けるのか? 現地で“狂人”と呼ばれる男の、命知らずな本音に迫る。
ミャンマーの国技で、約1000年の歴史を持つと言われる「ラウェイ」。寝技がなく、パンチ、キック、ヒジ、ヒザを使って戦う様子はキックボクシングとあまり変わらないが、その手にボクシング・グローブは装着されていない。バンデージを巻いたのみの拳で殴り合うのだ。さらに頭突き、投げ、金的攻撃(故意でなければ)まで認められていることから、「世界一危険な格闘技」と言われている。
あまりの危険さに、ミャンマー国外から挑戦する選手はほとんどいないが、逆にこの世界に魅せられて挑み続ける者もいる。渡慶次幸平(とけしこうへい)もその一人だ。インタビューしたのは試合の約1週間前。まさに闘争心が体に充満している時期だった。
――まずはラウェイが世界一危険な格闘技、と言われる理由を教えてください。
渡慶次:素手で殴り合うし、ヒジ打ち、頭突き、投げ技がある。ビビって攻撃しなかったら、観客からブーイングが飛ぶ。ヤンキーの喧嘩に近い感覚かもしれませんね(笑)。
――頭突き、どんな痛みですか?
渡慶次:ボウリング玉で殴られたみたいな衝撃です。寺の鐘のように、一発食らったらグワワワ~ンと痺れるし、失神することも多い。
――ダウンも特徴的です。
渡慶次:普通のキックボクシングではフラッシュダウンも重なればKO負け。でも、ラウェイは2秒以内に立ち上げれば許される。ボコボコでもフラフラでも立てば続行。気絶しても「タイム」がありますし。
――その「タイム」とは?
渡慶次:一試合で4ラウンドまでに1回だけ、セコンドが要請したら2分間の休憩が取れるルール。失神したり、もう立てないほどのダメージを負っても、もう1回戦わされる。
――気絶から試合再開して、気持ちは折れないのでしょうか?
渡慶次:タイプは分かれますね。ミャンマーでも「もう無理」と拒絶する選手がいるほど。僕の場合は、「テメェ、気絶させやがったな、この野郎!」という気持ちで向かっていける。前に記憶がないまま戦い続けたこともありました。顔もボコボコで、フラフラで、ほぼゾンビっすよ(笑)。それでもレフェリーは止めない。
――すごい競技ですね……。
渡慶次:だから結局、豊かな日本でラウェイに挑戦する選手は限られている。12戦もやるヤツなんて、僕ぐらいしかいない。年間でいうと6試合ペースでやっていますから。
――試合はお互いの意地をぶつけているような感じに見えます。
渡慶次:痛がってもダメ、弱みを見せてもダメ。今年2月の試合では1ラウンド目で拳を骨折してしまったけど、バレたら相手に勢いがつくし、試合を止められかねない。そのまま殴り続けて勝ちましたが、試合後に診てもらったら複雑骨折でした(笑)。
手術して、まだ治ってないのにジムや大会運営側には「完治してます!」と伝えて、5月の試合にも強行出場。また殴った1発目で折れましたが蹴り続けて勝ちました。
――後楽園ホールでの大会も、他の格闘技大会とは客層が違います。
渡慶次:ラウェイはミャンマーの国技で、ちゃんと国の機関から承認を受けています。現地のしきたり通りに、大会前にはお祈り、試合前には“ラウェイ選手がやる踊り”もある。また、日本大会もミャンマーと取引のある企業が多く協賛してくれている。自民党の二階俊博幹事長がプレゼンターとして来場したこともありましたね。
世界一危険な格闘技に挑み続ける“最狂の男”
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