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孤高の王者・プロボクサーの田中恒成は3階級制覇を果たしても、なぜ無名なのか?

「世界王者って、こんなもんか……」

撮影/尾藤能暢

 日本最速、プロ転向5戦目で世界王者になった感想を聞かれて、田中恒成はそう振り返った。これは簡単に穫れた、という意味ではない。WBA、WBC、IBF、WBO……世界のボクシング団体が増えたことでボクサーにはチャンスが広がったが、同時に日本人の世界王者が増えすぎてしまったという現実がそこにはある。元世界王者の木村翔、田口良一を退けて3階級制覇を果たしても、「まだ無名っすよ」と田中は話す。どこまで勝てば世間は認めるのか、自分は納得するのか。今回、山形県酒田市で4日間の合宿に臨む孤高の王者を訪ねた。

13戦無敗、世界最速3階級制覇。だが、いまだ無名――

――次戦は8月24日、指名試合で1位の強豪、ジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ・28歳)との防衛戦に決まりました。 田中:相手どうこうは関係ないです。世界王者には防衛期限があり、9か月に1回はランキング1位の最強挑戦者と戦わなくてはいけないので、受けるだけです。僕自身は強い選手とやることには抵抗ないんで。 ――これまで13戦無敗、ここまでくると負けることに恐怖感は? 田中:無敗の世界王者は、やはり価値がすごく高いと思うんです。変な話、“最強神話”という感じがするじゃないですか(笑)。だから負けたら王座の称号も、人気も失うとも思っています。だからといって、“ユルい相手”で防衛戦を重ねるのもダサくないですか?

リスクに立ち向かうために死ぬほど練習しています

――嚙ませ犬で防衛を重ねる選手がいるのも事実です。 田中:僕の考えでは、どれだけリスクに立ち向かえるか、がひとつの勝負です。負けるかもしれない、でも、それぐらいの名前のある相手、強い相手と戦わなければ世間は納得してくれない。でも、負けるのに一番ビビっているからこそ、死ぬほど練習しているんでしょうね(笑)。 ――今回の合宿でも、毎朝20㎞のランニング、3時間近くミット打ちなどのトレーニング。それを終えたら、またランニング……、素人目から見れば“異常”と言える練習量です。 田中:本当は走りたくないし、走るのも好きじゃない。走るの遅いから、同じジムの若手の畑中建人にも負けっぱなしですから(笑)。この合宿は3月の防衛戦が終わってから、自分にちょっと気合が入ってなかったので、……頑張る気持ちを思い出せれば十分、という合宿です。今回の練習拠点になっている酒田ボクシングジムでも、トレーナーの皆さんにかなり追い込んでもらっています。 ――この合宿には所属するSOUL BOX畑中ボクシングジムの畑中清詞会長や、お父さんの斉さんも同行されていますね。 田中:父は僕ら兄弟にずっとつきっきりです。それこそ子供の頃、空手をやっていた時代はスパルタでしたから(笑)。毎朝のランニングは自転車で伴走してくれて、学校から帰ってくれば庭にあるサンドバッグを「叩け!」と。大雪が降り空手道場に誰もいない日も、祖父のお葬式の日も練習していた。子供の頃から空手を“やる”以外の選択肢はなかった。 ――まさにスパルタですね。 田中:本当に感謝しているのは事実です。幼少期に叩き込まれたことで、「頑張ること」が染みついている。今でも必死に練習ができたり、試合で強い気持ちが出せるのは、父が土台をつくってくれたのが大きい。
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戦うしか生きる道はない。幼い頃からそう思っていた
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