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なぜ『moon』は伝説と呼ばれるのか?アンチRPG『moon』が奇跡の配信スタート

『moon』の世界観・シナリオから受けた衝撃

 こうした外側のユニークさに加え、『moon』が伝説となったもうひとつの理由はシナリオの深さ。ゲームはこのように始まります。  月の輝くある夜、ひとりの少年が『FAKE MOON』というRPGを遊んでいました。勇者になってタンスを探って伝説の装備一式を手に入れ、邪悪なモンスターたちを倒す……。すると、「ゲームなんかやめて早く寝なさい」というお母さんの叱り声が。寝ようとしたとき、少年はゲームのなかの世界「ムーンワールド」に吸い込まれます……。

ゲーム内ゲームに入り込むメタ的な構造がラストにもつながる

 少年がムーンワールドで実際に見た勇者は、レベルアップのために罪のないアニマルを殺して回る困り者。少年はさまようアニマルたちの魂に触れて、「キャッチ」することで救い、お礼に「ラブ」をもらって行動できる時間を増やしていきます。  登場人物も癖の強い変わり者ばかり。関西弁で喋る自称インテリの鳥・ヨシダ、出生の秘密(?)があるパン屋の主人ベイカーさん、各々の衝動に突き動かされる大工コンビのニッカとポッカ、城下町の公園で暮らす世捨て人のガセ、キノコ洞窟に住む原住民・カクンテ人……。

城下町で主人公にアドバイスする鳥のヨシダ。味のあるキャラが多い

 彼らが抱える問題を解決しても「ラブ」がもらえます。勇者の行動は正義なのか? この世界はいったい何なのか? 住人たち各々の幸せとは? そしてエンディング……。  よく『moon』は“アンチRPG”と評されますが、それ以上に愛や人生、世界の意味について考えを巡らせたくなる哲学的、文学的な内容になっています。『moon』発売から22年。自分も年を重ねたことで、また新たな想いが生まれるのか。プレイが楽しみです。 ※画像はPS1版のものです
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も
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