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不器用な男子高校生が女性教師に向ける、淡く切ない恋心の行方は…/藤沢数希

―[モテる映画工学]―
~映画『マイ・ビューティフル・デイズ』~
マイ・ビューティフル・デイズ

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不器用な男子高校生が女教師に向ける淡く切ない恋心の行方は……

 ビリーは行動障害を抱え、服薬しながら高校生活を送っている青年だ。不器用で繊細だが、演劇の才能がある。彼は美人の国語教師であるスティーヴンスに密かに恋心を寄せている。  ある週末、ビリーはクラスのリーダー的な女子のマーゴットと陽気な男子のサムに誘われ、スティーヴンス先生の引率で、泊まりがけで演劇大会に出場することになる。本作は、多感な少年と少女たちの思いが交錯しながら展開していくロードムービーである。  不器用なビリーがなんとか先生に近づこうとあの手この手でがんばるのだが、当然、先生も簡単に生徒の恋愛感情に応えるなんてわけにはいかない。そのへんのもどかしさ、切なさを楽しむのがこうした映画の正しい見方であるのだろうが、まあ男の恋愛なんていうものは所詮ヤレてなんぼである。  恋愛工学の専門用語を使えば、ビリーは完全に「非モテコミット」だ。もうこの女しかいないと思い詰め、その一人の女のことばかり考えてしまう。そして非モテだから、ほかに優しく接してくれる女性は実際にいないのだ。  泊まりがけの演劇大会には全国の高校から女性教師や男性教師たちが集まってきて、宿泊施設ではそうした教師たちのカクテルパーティが開かれる。日本のPTAがお母さんと学校の先生なんかの不倫の巣窟になっているように、こんなイベントで何も起きないわけはない。  そこは恋愛工学を習得した、手練手管の不倫おっさんたちの狩り場だ。そして、イケメンの不倫おっさんはまるで息を吸って吐くようにいつものルーティンで「何の先生してるの?」とスティーヴンス先生に話しかけ、口説き落とそうとするのだ。
物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある

マイ・ビューティフル・デイズ
配給/ファインフィルムズ 監督/ジュリア・ハート 出演/ティモシー・シャラメ、リリー・レーブほか 11月1日より全国公開
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