任天堂とセガ、2人の元社長が見てきたゲーム業界の表と裏
●『元社長が語る! セガ家庭用ゲーム機 開発秘史 ~SG-1000、メガドライブ、サターンからドリームキャストまで~』佐藤秀樹 徳間書店
『元社長が語る!』は、自らを「技術屋」と呼ぶ佐藤元社長が年代順に詳しくセガの歴史を振り返っていく内容。この9月に刊行されました。
佐藤元社長は家庭用ゲーム機という概念すらなかった1971年に新卒で当時のセガ・エンタープライゼスに入社。アーケード用はもちろん、セガ最初の家庭用ゲーム機「SG-1000」から家庭用ゲーム事業にも長らく関わってきました。ドリームキャスト失敗後の2001年に叩き上げとしてセガの社長に就任し、2003年まで社内の立て直しに注力しました。
なかなか表には出ないゲーム開発の裏側がぶっちゃけられている本書。セガは任天堂になぜ負け続けたのか、それでも挑戦を止めなかった理由とは? セガの敗因を分析するくだりは、歯に衣着せぬ言いようである種爽快。
興味深かったのはセガとソニーの奇妙な関係性。一時期セガとソニーが協力してコンシューマ事業を行えないか模索していた時期があり、さらにさかのぼると当時パラマウントが傘下のセガをソニーに売却する動きもあったとか……。そうした縁もあって、プレイステーションの生みの親であるSCEの久夛良木健さんとは「半年にいっぺんくらい、2人きりで飯を喰いながら、お互いにさしさわりのない範囲内で情報交換をしていた」というから驚きです。
ほかにも、100億円とも言われる大金を注ぎ込んで「湯川専務」をプロデュースしたにもかかわらず失敗したことへの怒り、火中の栗を拾わざるを得なかった社長就任時の事情など、セガファンには衝撃の暴露もあります。
2人の元社長が振り返るゲームの歴史とその裏側。そのとき感じた想い、今だから言える真相、ゲーム開発者としての仕事哲学……。読書の秋、本で“ゲーム”を楽しんでみては?ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も
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