任天堂とセガ、2人の元社長が見てきたゲーム業界の表と裏
―[絶対夢中★ゲーム&アプリ週報]―
9月のコラムで任天堂とセガにまつわる2冊『セガ vs. 任天堂』『テトリス・エフェクト』を紹介しましたが、今回は任天堂の岩田聡元社長、セガの佐藤秀樹元社長、2人の元社長の言葉をまとめた本を紹介します。任天堂もセガも家庭用ハードを開発し、成長してきたメーカー。何を重視し、どこに注力して開発・販売を進めてきたのでしょうか? 普段は見えないゲームメーカーの裏側が見える2冊です。
●『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』ほぼ日刊イトイ新聞 株式会社ほぼ日
『岩田さん』は、サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」での岩田聡さんのロングインタビューを再構成し、さらに巻末に岩田さんと深く関わった任天堂の宮本茂さん、コピーライターの糸井重里さんのインタビューを掲載した本。7月に刊行されました。
岩田元社長はプログラマーからスタートして、『ゴルフ』『星のカービィ』『MOTHER2』などの開発を任天堂から受託していたソフト制作会社・HAL研究所の社長に若くして就任しました。その後任天堂の当時の山内溥社長に後継者として指名され、2002年に任天堂の社長に抜擢。2015年に亡くなるまで、新作を動画でユーザーに直接伝える「Nintendo Direct」の顔としても親しまれました。
本書は全7章立て。高校時代にプログラムできる電卓を手に入れ夢中になった話から始まり、33歳のときに15億円の負債を抱えたHAL研究所の社長となったエピソード、結果を出すためのプロジェクトリーダー論、家庭用ゲームに求める理想……。
特に第4章「岩田さんが信じる人」では、岩田さんと任天堂の人々との関わりが温かく語られ、任天堂イズムもよく伝わってきます。「任天堂はケンカしたら負ける。よそとケンカしたらあかんのや」という山内溥さんの言葉や、「アイディアというのは、複数の問題を一気に解決するものである」という宮本茂さんの創作観など、なるほどと思える言葉が詰まっています。
「ボトルネックがどこなのかを見つける」「いい意味で人を驚かす」「合理的ならさっさと覚悟を決める」といった岩田元社長の仕事ルールの数々は、ゲーム業界を超えてどの業種でも役立つ考え方ではないでしょうか。
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ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も
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