更新日:2019年12月11日 16:21
ライフ

ネットで10年以上話題の「きさらぎ駅」の謎を検証…実在するのか?

遠州鉄道に「きさらぎ駅」のモデルになった駅があった?

 これについて地元紙、静岡新聞の記事によると、沿線の『さぎの宮駅』がモチーフになった可能性があるとの遠州鉄道の担当者のコメントを紹介している。
さぎの宮駅。周辺に草原はない

さぎの宮駅。周辺に草原はない

さぎの宮駅外観

さぎの宮駅外観

 2019年10月某日、筆者はこの『さぎの宮駅』を訪れたが駅員が常駐しており、無人駅ではなかった。また、駅周辺は田畑もあるが住宅も多く、交通量の多い道路も並行して走っていて、投稿された『きさらぎ駅』周辺の情報と合致しそうな部分がない。  なお、きさらぎ駅の話には後日談がある。書き込みから7年経った2011年、きさらぎ駅のまとめサイトに同じ「はすみ」を名乗る人物から「今、普通の世界に戻れました」との書き込みがあったのだ。  それによると2004年の最後の書き込みの後、山奥の暗い森の中で車が停まった後、車が光って運転していた男性は消滅。そして、近づいてきた別の男性が「今のうちに逃げるんだ!」と叫び、彼女が泣きながら走って気が付くと見覚えのある最寄り駅で、7年も過ぎていたという内容だ。

創作だと知っていても面白い

 冷静に考えれば、人が7年も行方不明になっていれば警察に捜索願を出し、公開捜査になっている可能性が高いだろう。一方、2018年には『きさらぎ駅』に行ってきたという別の人物の書き込みが『5ちゃんねる』にあり、こちらは車掌や沿線住民との触れ合いが中心のほのぼのとした内容になっている。  恐らく、一連の話は実体験風の創作で、新しい書き込みは別人が便乗して投稿した可能性が高いだろう。でも、そうだとしても“よく出来た話”であることには間違いない。  小説『裏世界ピクニック』(宮澤伊織/ハヤカワ文庫)では『きさらぎ駅』をモチーフとした話が登場し、コミック版も登場。2018年には遠州鉄道の車内広告で同書刊行のPRを行うコラボも実現している。  さらに中華圏でもこの話は有名。『如月車站』という名前で小説や漫画にも取り上げられ、聖地巡りで遠州鉄道を訪れる海外の旅行者もいるようだ。  実在する鉄道駅にもあたかも草原にあるような雰囲気の駅がないわけでもない。物語としても十分面白いが、そうやって自分なりの『きさらぎ駅』を探して旅に出てみるのもまた面白そうだ。<TEXT/高島昌俊>
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
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