更新日:2022年05月17日 07:28
ライフ

“日本一危険”と評判の駅に行ってみた。黄色い線の内側に並べない…

―[シリーズ・駅]―
 列車が駅に到着、または通過する直前、ホームで流れる「黄色い線の内側に下がってお待ちください」というおなじみのアナウンス。線路への転落や列車との接触事故を避けるための注意喚起で、誰もが一度は聞いたことがあるはずだ。
中津駅

中津駅

 だが、この黄色い線の内側が人ひとり分のスペースしかなく、ギャグかと思ってしまうほどホームの狭い駅が大阪にある。それが「中津駅」(大阪市北区)だ。

ホームが狭すぎて並ぶと危険?

中津駅のホーム

中津駅のホーム

 梅田駅の隣駅ということもあって関西では知っている人も多く、ネット上では“日本一危険な駅”にも名前が挙がっている。今回、初めて中津駅を訪れたが、都内でホーム幅の狭い駅として有名なJR御茶ノ水駅の比じゃないレベル。
黄色い線の内側は、1人分のスペースしかない

黄色い線の内側は、1人分のスペースしかない

 なんと黄色い線(点字ブロック)とその間の待機スペースの幅がほぼ同じ。これでは乗車口に列を作って並ぶことも不可能だ。  そもそもの話、普通の駅にはあるはずの乗車口の位置を案内するホームのペイントもなければ、上から吊り下げられたプレートも見かけない。これは「並ぶな危険!」というのを暗に示唆しているのだろうか?  中津駅は両側を線路に挟まれた島式ホーム2つを持ち、平日は約520本の列車が発着。1日あたりの乗降客数は2万1949人(2017年)で、さらに神戸三宮駅方面に向かう神戸線、宝塚駅方面と結ぶ宝塚線の乗り換え駅になっており、実際には統計以上の利用客がいる。
朝のラッシュ時は人で埋め尽くされる

朝のラッシュ時は人で埋め尽くされる

 特に朝の通勤ラッシュ時は、ホーム端にある唯一の階段に向かって人が殺到。階段寄りの部分は、ホームを埋め尽くすほどの人で覆われる。実際に転落事故や列車との接触事故も多く、最近だと2019年4月に人身事故が起きている。  筆者が訪れたのは昼過ぎだったため人もまばらだったが、1つしかない階段は非常に狭く、車いす用の階段昇降機の設備は見当たらない。

飲んだ日は怖くて利用できない

 正直なところ、車いすの方がこの駅を利用するのは危険極まりないだろうし、ベビーカーの利用もおすすめできない。いずれも脱輪、転落のリスクが高いからだ。
「線路に降りるな!」との注意書き

「線路に降りるな!」との注意書き

 また、駅ホームでは酒に酔った人が線路に転落する事故も頻発しているが、これほど狭いとちょっとよろめいただけでも落ちてしまいそうだ。駅周辺には改札近くに大衆酒場がある程度で飲食店は少ないが、マンションなどが林立している地域のため、ほかの場所で飲んで帰宅のために下車する人も多いはずだ。  中津駅の近くに住んでいる筆者の知人も「酔った状態では危なすぎて使われへん。飲んだ日は(近くにある)地下鉄の中津駅から帰るようにしてる」と話していた。
柱が通行を妨げ、看板の内容と矛盾

柱が通行を妨げ、看板の内容と矛盾

 ホームには《黄色い点字ブロックの内側におさがりください》と書かれた注意書きの看板があるが、ホーム中央には柱が通行を妨げるような形であるため、点字ブロックの内側を歩き続けることはそもそも不可能。
ゴミ箱もホーム幅に合わせてスリム

ゴミ箱もホーム幅に合わせてスリム

もはやベンチではない?

もはやベンチではない?

 これほどの狭小ホームの影響かゴミ箱もほかの駅よりも幅の取らないサイズのものだし、ベンチがあるのも2つあるホームの1つだけ。それも一般的な座る仕様ではなく、寄りかかって使う、ほかの駅ではお目にかかれないタイプのものだ。
次のページ right-delta
狭すぎてホームドアも設置できない?
1
2
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

記事一覧へ
おすすめ記事