更新日:2023年05月07日 13:50
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「M-1」準決勝は優勝候補が敗退。「大波乱の理由」をユウキロックが徹底解説

大舞台で「キャリアハイ」を記録したコンビ

 そして、ここからが困難だった。それ以外のコンビは「審査員の見方によって変わるのでは?」という部分が少なくとも1箇所はあった。それは「ウケ」「内容」「テクニック」「上積み」「好み」など多岐にわたる。  決勝未経験コンビでは「インディアンス」が光っていた。彼らにとってキャリアハイを叩き出したのではと思える最高の漫才だった。ただ、「設定」が審査員に好まれないのではないかという一抹の不安を感じた。

インディアンス

 俺は第1回大会から前回大会まですべての大会を観ているだけではなく、出場者でもあった。だから、徹底的に分析をしてきた。長い歴史の中で傾向も変わってきたこともつぶさに感じていた。そして、思いを巡らせながら、拭いきれない不安が胸を締め付けた。今日の「インディアンス」を「落とす」ということは「インディアンス」を「殺す」ということだ。  しかし、そんな俺の思いは杞憂に過ぎなかった。「インディアンス」はそこに立っていた。決勝初進出。「インディアンス」は「インディアンス」のまま進軍すればいい。必ず12月22日の決勝、さらなる「キャリアハイ」を叩き出すだろう。 「ニューヨーク」は後輩芸人ではあるが「いちファン」と言っていいぐらい大好きなコンビである。基本的に俺は「悪い奴」が好きなのだ。「ニューヨーク」は「悪い奴」なのだ。準決勝でも「悪いネタ」をぶち噛ましていた。

ニューヨーク

 ただ、俺は漫才を観ながら心の中で叫んでいた。「声かぶってる、声かぶってる!! 屋敷君、焦るな焦るな!! 待って待って!! そのセリフもっと立てて!! もっと立てて!!」。気がついたら、彼らの漫才は終わっていた。ほかのコンビにはない「バッドボーイ漫才」だった。俺が思っていた「テクニック」面での不安も蹴散らしてみせた。

「非吉本所属コンビ」は2強の様相

 上記の分類では「吉本興業以外の事務所」という、いかがわしい書き方をしているが、別にM-1サイドが吉本に忖度をしているわけではない。そもそも吉本は芸人の数が圧倒的に多く、出場者も多いため、決勝進出者が多くなるのは必然である。  かつては吉本以外の事務所所属の決勝進出者が多い大会もあったが、復活した2015年の第11回大会から昨年の第14回大会までを数えると、4大会でわずか7組だけしか決勝に進出していない。ここ2年は各1組だけの決勝進出に留まっている。  これは決して吉本以外の事務所が衰退しているわけではなく、吉本勢の充実がこのような結果になっている。特に吉本大阪勢は劇場の数と芸人の数のバランスもよく、賞レースも多い。切磋琢磨できる環境が整いすぎている。  そんな中で、「テレビ番組としてのバランス」という観点から「吉本以外の事務所に最低『1枠』を」と考えてもおかしくないと勝手に思っている。ただ、その「1枠」をお情けでもらっているかというと、それは違う。しっかりともぎ取っているのが事実だ。  今回で言えば「ぺこぱ」対「東京ホテイソン」だったというのが俺の見解だ。2組の漫才スタイルは正統派な漫才スタイルではない。「ぺこぱ」流と「東京ホテイソン」流が正面からがっぷり四つで組み合った中、後半に少し「ぺこぱ」がネタに変化を加え、懐の深さを見せつけ、決勝進出を決めた。

ぺこぱ

東京ホテイソン

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1972年、大阪府生まれ。1992年、11期生としてNSC大阪校に入校。主な同期に「中川家」、ケンドーコバヤシ、たむらけんじ、陣内智則らがいる。NSC在学中にケンドーコバヤシと「松口VS小林」を結成。1995年に解散後、大上邦博と「ハリガネロック」を結成、「ABCお笑い新人グランプリ」など賞レースを席巻。その後も「第1回M-1グランプリ」準優勝、「第4回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」優勝などの実績を重ねるが、2014年にコンビを解散。著書『芸人迷子

芸人迷子

島田紳助、松本人志、千原ジュニア、中川家、ケンドーコバヤシ、ブラックマヨネーズ……笑いの傑物たちとの日々の中で出会った「面白さ」と「悲しさ」を綴った入魂の迷走録。

⇒試し読みも出来る! ユウキロック著『芸人迷子』特設サイト(http://www.fusosha.co.jp/special/geininmaigo/)

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