更新日:2019年12月13日 16:31
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G1・朝日杯FS、2歳G1はスパルタに耐えた経験がモノをいう?

ラウダシオン

ラウダシオンが持っている「経験」とは…? 写真/産経新聞社

 競馬は2歳G1が真っ盛り。先週の阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神JF)、今週末の朝日杯フューチュリティステークス(朝日杯FS)、そして12/28(土)には今年最後のG1、ホープフルSが行われる。  2歳G1というとまだキャリアの浅い馬たちが戦うために未知の面もあるが、未知ゆえに思わぬ高配当が待っていることもある。先週の阪神ジュベナイルフィリーズでは、2戦2勝で重賞を制し挑んできた馬が以下の3頭いた。それぞれの人気と結果は以下の通り。 リアアメリア   1.8倍 1番人気 →6着 ウーマンズハート 4.5倍 2番人気 →4着 レシステンシア  11.2倍 4番人気 →1着  ご覧の通り、下馬評はリアアメリアが断然だった。しかし、フタを開けてみると無敗馬の中では最も人気がなかったレシステンシアが勝利。それも5馬身差という圧倒的な差をつけての完勝だった。 「走ってみたら強かった」  これはキャリアが浅い馬たちの戦いではしばしば起こることで、先週の阪神JFは2歳戦らしい結末だった。

若い馬には厳しいレースの経験が必要

 では、リアアメリアやウーマンズハートと、レシステンシアは何が違ったのか? まず一つ言えることは、レシステンシアには1600mの距離経験がなかった。リアアメリアとウーマンズハートは1600mを連勝して挑んだが、レシステンシアは1400m。まだ未経験の馬よりは、経験を積んだ馬の信頼度が上がるのは当然だろう。  しかし、その1600m経験が仇になった面もある。というのも、2歳戦は各陣営とも将来を見据えるためにスローペースになることが多く、また距離が延びれば延びるほど頭数も減る傾向がある。  断然人気だったリアアメリアは、デビュー戦が7頭立て、2戦目が9頭立てと、いずれも少頭数だった。同馬はデビュー前から評判が高く、野球でいえばドラフト1位のピカピカのルーキー。そんな期待馬の出走レースゆえに各陣営ともに重複を避ける傾向があり、結果として馬群でもまれたり、厳しい流れになったりといった経験を積むことができなかった面もある。  一方のレシステンシアは、デビュー戦が18頭立て、2戦目のファンタジーSも15頭立てと、多頭数での競馬の経験があった。また、ペースの目安となる前半の1000mのタイムを比較しても、前述2頭とは雲泥の差があった。 ウーマンズハート=新潟2歳S→61秒4 リアアメリア  =アルテミスS→60秒6 レシステンシア =ファンタジーS→57秒3  ご覧の通り、2戦目の1000mの通過タイムは3秒以上もレシステンシアが速い。しかもレシステンシアはこの流れを2番手から追走したため、前半から厳しい流れを経験していたことが本番で生きた可能性が高い。  就職活動の現場では今も昔も体育会経験のある学生が重宝される傾向があるように、馬も、厳しいことに耐えた経験は大事なのだ。ぬるい流ればかりの温室育ちだと、いざ本番で厳しい経験を課された場合に対応できないケースが多々ある。

今週の人気馬もぬるいレース経験ばかり

 そんな視点で今週の朝日杯FSの人気馬を見て行くと、少し怪しい可能性もある。  恐らく1番人気濃厚のサリオスは、2戦2勝。しかしながら、デビュー戦は8頭、2戦目は9頭と少頭数の競馬しか経験がない。  また同じく人気を集めそうな2戦2勝のレッドベルジュールもデビュー戦は9頭、2戦目が11頭。しかも、デビュー戦は1000m通過64秒7の超スロー、2戦目も重賞ながら1000m通過は59秒7、しかもこの流れを出遅れて後方から2番手をゆったり追走した経験しかない。  いずれもノーザンファーム生産、そして外国人騎手騎乗、さらにお父さんもサリオスがハーツクライ、レッドベルジュールがディープインパクトと、現代競馬のトレンドをコンプリートした馬たちだが、2歳戦の難しさを痛いほど思い知らされた先週の結果を見ると、今週ももう少し伏兵を狙ってみても面白いかもしれない。

朝日杯FSのイチオシ穴馬は?

 そこで期待したいのがラウダシオンだ。  ラウダシオンは現役最強馬アーモンドアイや、昨年の有馬記念を制したブラストワンピースなどを輩出するシルクレーシングの所属馬でルメール騎手が騎乗する。人気になってもおかしくないプロフィールの持ち主だが、デビューが1200m戦で、これまでの3戦でマイルの経験はない。  だが、2走前の小倉2歳Sでは14頭立てのレースで出遅れて後方からの競馬になりながらも、直線はしぶとく伸びて来た。そして前走のもみじSでは、雨で不良馬場まで悪化したタフな状態をものともせず差し切り勝ち。4コーナーでは泥を浴びてピンクの帽子がかなり汚れていたが、直線は最後まで伸びていた。  まさに上位人気勢が経験できていない、厳しい経験で精神面の強さも問われた一戦で、前回のキツイ経験が今回に生きるかもしれない。
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