更新日:2023年05月13日 09:51
エンタメ

タイを拠点にピンク情報から紛争地帯まで取材し続けた男たち「日本の恥」とも言われ…

『週刊文春』を辞めて海外逃亡…タイは日本で行き詰まっている人たちのセーフティネット

サメット島

サメット島にて

 話を戻そう。そもそも、室橋氏はどのような経緯でGダイアリー編集部で働くようになったのか。  大学卒業後、就職せずにフリーライターとして歩み始めた頃。バックパッカーの聖地と呼ばれたカオサンロードでGダイアリーの創刊号を見かけたことをきっかけに、自分も書きたいと強く思った。そして、2002年頃から外注のライターとして参加するようになる。実はその後は『週刊文春』編集部に在籍していた。  文春と言えば、圧倒的な取材力を武器に“文春砲”を放つ大手週刊誌だが、相当な激務であることは想像に難くない。そこで挫折を味わい、「タイに逃亡した」と語る。 「まわりがすごい記者だらけだったので萎縮した部分もありますが、特に張り込みがキツかった。長いときは1週間。いつ終わるのかわからないことを続けていると、精神的に参ってくる。休みの日や夜中でも何か起きれば動かなければならない。いつ何時、どんな事件や災害があるかわからないので気が休まらなかった。それで30歳手前で『アジアで勝負してみたい』と見栄を張りつつ、タイに逃亡しました。  当時は物価が安かったので貯金でなんとかなるだろうと思っていました。実際に辞めたあとも文春のアジアネタを書いていたし、ガイドブックの仕事もあったので。なにより、タイにはGダイアリーがあるなって」
100号記念_ミスGダイ1位ニンちゃん

文春でグラビア班だった室橋氏。表紙とグラビアページを飾る“Gガール”も担当。『Gダイアリー』100号記念永久保存版

 紆余曲折ありながら、わずかな希望を胸に、タイを頼った。ついに2006年から編集部員として身を置くことになったが、室橋氏は2014年まで約10年に渡って現地で暮らすことになる。 「実は今回の著書『バンコクドリーム』では、雑誌の裏側を伝えるだけでなく、日本で生活が行き詰まっている人たちに向けて、“タイで暮らしてみようか”というテーマも込めている。Gダイの読者には、満員電車のストレスからタイに逃れて来る人も多かった。暮らしに疲れた日本人をタイが救ってくれていた。タイがなければ自殺していたという人たちもいるので、セーフティネットのような側面があったと思うんです。  かつての僕自身もそうだった。それでタイに行ってみたらなんとかなった。だから、選択肢のひとつとしてタイがあることを知ってほしくて。編集部の仕事とは関係のない、具体的な暮らしのヒントやビザの話などもあえて触れています」  室橋氏は、ときには大きな政治混乱に巻き込まれながらも、クセのあるライターたちとの格闘、締め切りに追われた日々を振り返り、それでも「夢のような時間だった」と目を細めるのだった。<取材・文/藤山ムツキ>
ライター・編集者。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』(共に彩図社)など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ【最新版】』(辰巳出版)がある。Twitter:@gold_gogogo
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バンコクドリーム 「Gダイアリー」編集部青春記
バンコクに編集部を置き、「日本の恥!」と駐妻たちに目の敵にされた伝説の雑誌「Gダイアリー」。 その編集部員が綴るウソのような舞台裏。あの熱量はなんだったのか?
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1月16日 旅の本屋のまど(西荻窪)
1月31日 阿佐ヶ谷ロフトA
2月8日 タイ・バンコク
2月19日 高円寺パンディット
2月21日 ロフトプラスワンWEST(大阪)
※詳細は室橋裕和氏のTwitter(@muro_asia)からチェック!
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