第7位 エースが疲れていなければ……“負け方”も選考材料になる
1999年秋の九州大会 決勝戦 柳川17-3佐賀商 準決勝 柳川8-0城北 佐賀商5-2九州学院
準々決勝 城北(熊本1位)8-3佐世保実(長崎1位) 柳川(福岡1位)5-1延岡学園(宮崎2位) 佐賀商(佐賀1位)7-1波佐見(長崎2位) 九州学院(熊本2位)6-0戸畑(福岡2位)
この年の秋の九州大会は全国屈指の剛速球右腕・香月良太(元・オリックスなど)を擁する柳川が力の差を見せつけ余裕で制した。翌年の選抜の出場枠は4枠である。投打とも実力は全国レベルの柳川とその柳川に決勝戦で大敗はしたが、準Vという実績から佐賀商も当確。さらにベスト4に残った九州学院も間違いないところ。ここで難しいのは最後の1枠である。
ベスト4組ながらも柳川の前に7回コールド負けの城北は同じ熊本勢の九州学院が選出される可能性濃厚なため、地域性でも不利となる。この城北を逆転するとすれば、準々決勝で柳川と1-5で敗れた延岡学園か(しかも地域性でも有利)? とはいえ、城北は県大会で九州学院を下して優勝しているし、柳川に大敗したといってもその柳川の強さが別格であることは決勝戦のスコアからも明白。さぁ、城北か、それとも延岡学園が逆転選出されるのか? 結果は……。
柳川 佐賀商 九州学院 戸畑。
えっ、戸畑?なんじゃそりゃ。どういう理由? 大注目の選考理由を見てみると「
城北と8強で試合内容のいい戸畑、波佐見、延岡学園の4校で再検討されたが、本格派右腕のエースを評価する声が高く、戸畑が選ばれた」。もう、まず“試合内容のいい”っていう部分で戸畑が選ばれてるのが……。準々決勝で0-6の完敗なのに。いちおう当時のスポーツ新聞によると「
戸畑は準々決勝で0-6で敗れたものの、エースが3連投という事情があった。一方、城北は準決勝で0-8のコールド負け。しかも前日は試合が空いていたという比較的有利な状況だった」とその“負け方”が選考材料になったことを報じてはいるのだが……。
負け方も選考材料って? 2位以下で地区大会に進出した以上、日程が1位校と一緒にはならない。このときの九州大会では県の1位チームがシードされる一方で、2位以下チームは1回戦から登場するケースが多々。つまり過密スケジュールは戸畑だけじゃない。まぁ、戸畑は泣く子も黙る福岡県内きっての伝統的な公立進学校であることを付け加えておこう。
第6位 地区大会で3勝したのに、最後にコールド負け食らったら
1986年秋の九州大会 決勝戦 西日本短大付3-2海星 準決勝 海星8-1波佐見 西日本短大付6-1熊本工
準々決勝 西日本短大付(福岡南部1位)10-0鹿児島商(鹿児島2位) 波佐見(長崎3位)3-2鹿屋中央(鹿児島1位) 海星(長崎1位)6-5日向学院(宮崎1位) 熊本工(熊本1位)3-2宮崎日大(宮崎2位)
試合日程の過密スケジュールが逆に裏目に出た例をここで1例。この翌年の春の選抜の九州地区の出場枠は4枠。優勝校の西日本短大付が文句なしに真っ先に選出されると準V校の海星も問題なく当選。残り2枠のうちベスト4組の熊本工が3番手で選ばれた。残る1枠を7回コールド負けながら、ベスト4の一角に残った波佐見、ベスト8敗退組の日向学院、そして2回戦敗退ながらVチームの西日本短大付と2-3の好勝負を演じた沖縄水産(沖縄1位)で争ったのだが、やはり波佐見は準決勝で大敗を喫したこととすでに県勢の海星が選出されていることが響いて落選。結局、最後の枠に滑り込んだのは準Vの海星と5-6の接戦を演じた日向学院だった。
と、こう書けば至極真っ当な選考だと思われるのだが、一つここで注目したい点が。以下がこのとき落選した波佐見の試合日程である。
1日目 1回戦 7-1佐賀西 2日目 2回戦 5-1常磐 3日目 準々決勝 3-2鹿屋中央(延長12回) 4日目 準決勝 1-8海星(7回コールド)
4連戦のすえに力尽きているのである。長崎3位での出場なのだから仕方ないっちゃ、ないのだが、1回戦から3勝してきての堂々たるベスト4、しかも前日は延長12回の激闘だったんだから、コールド負けもやむを得ないところ。にもかかわらず、まったく試合日程が考慮されてない。前述した戸畑との違いはいったい何なのよ。一応波佐見も公立校なのに。
今回はここまで。上位ベスト5は次回にてご紹介する。果たしてどんな衝撃の“謎選考”が飛び出すのか? 乞うご期待。<取材・文/上杉純也>