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<純烈物語>リーダー酒井のプロデュース力に「踏み込める次元ではない」。レコード会社マネジャーが舌を巻いた理由<第34回>

メンバーがシンドい時も共有したい

「失礼な話、特典会の時間はお客さんに喜んでいただけるからこそ、あれほどの長い時間をやっているんですけど、正直メンバーとしてはシンドい時もある。そこの場面も見ているだけだとしても共有したいというのがあって。それを見ないと『ありがとう』と言うのも、うわべだけになっちゃう気がするんです。  今年元旦の凱旋ライブも、普通だったら朝5時まではやらないですよね。新曲『愛をください~Don’t you cry~』の発表をどのタイミングにするかリーダーに相談したら『日付が変わってからがいいんじゃないか。そこで予約取っちゃおうか』という話になった。『でも、予約を取ったら特典会なしというわけにはいかないですよ。撮影会やるんですか?』って言ったら、やると。いいんですか!? ありがとうございます!ですよね」  紅白に出演した時と同じ衣装での撮影会は、3ヵ所を回る都合もあり前年はやっていなかった。ラウンドで近づいてきたところはカメラに収められても、自分も一緒に写れるとなればファンにとっては一生モノのチャンスだ。  誰にとってもハッピーではあるが、言うまでもなくシンドい。にもかかわらず酒井は当たり前のような顔で「いいよ」と言い、他のメンバー3人も言葉を交わすことなく同意していた。 「それは僕も最初、これはなんなんだ?と思っていました。さっき言っていたのと違うということがリーダーはよくあるじゃないですか。取材にしても1本目と2本目で言っていることが違ったりする。それをメンバーはなんの反応もしないというか、どっちにも合わせるんです。それが普通になっていることが普通じゃない。器のデカさを考えたら、他のメンバーもすごいと思います。  それと朝5時まで起きてやるのはまた違うでしょうし、シンドいと思います。でも、『やりたい、やりたくない』よりも『やるべきか、やらないか』の判断をしているのだと思うんです。絶対にお客さんも喜んでくれるというのもわかるし。そこはリーダーの勝手な気持ちでやっているのではないというのが、理解できていると思うんですよね。『やるべきだ』と思うからやる。言葉を交わさなくても、メンバーは理解しているんです」  そうした純烈の姿勢がファンにも伝わっている事実を、新宮は現場で何度となく体験している。ある時、新譜を買いに来たおばちゃんが「今週はCD買うの、頑張るの!」と言っていた。発売1週目にオリコンで1位を獲らせたいのだという。  自身に関する欲求ではなく「1位にさせたい」という発想になるのかと驚かされた。本来ならば娯楽であるはずのものが、支援になっている。自分がハッピーになるべくやってはいるものの、そこにプラスしてメンバーのしあわせを同時に感じられる人たちが、こんなにも強力なのかと思った。  特典撮影会では、ブレてしまったり目をつむっていたりした場合はある程度の基準の上で撮り直しへ応じるようにしている。新宮から見て、これはそうした方がいいだろうと思い、声をかけるのだが「もう一回メンバーに負担をかけるのはかわいそうだから、やめておきます」と自重するファンがいる。  恋人感覚になる人もいれば、お母さん目線で接する人もいる。共通しているのは、ただ好きなんじゃないよ、という思いと姿勢だ。他のアーティストと比べると、純烈はそういうファンが目に見えて多い。  そもそも、紅白歌合戦に出るようなタレントが撮影会を実施すること自体、普通ではない。ライブだけでもオーディエンスを十分に楽しませている。 「そこは、今までやってきたことをできるだけ減らしたくないというのがあるんだと思います。紅白に出て、遠いところにいっちゃった、と感じているファンもいるでしょうけど、変わってないからね、ということですよね。じっさい、メンバーは何も変わってない。紅白に出たからといって偉そうになっていないし、これまで高いと思っていた買い物は、今でも高いと感じている。価値観は変わっていないんです。  とんでもないビッグアーティストになっても続けていたら? そこは想像つかないですよねえ。じゃあ日本武道館に進出しても特典会をやるのか。ヘタしたら、ハイタッチ会を武道館でやりかねないですよ。まあ、武道館でやるかどうかは別として、たとえば『マッスル』とのコラボで東京ドームとかになったら最高じゃないですか。でもそうなった時も、リーダーはハイタッチ会やるって言うと思います」
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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