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自衛隊「4月問題」が改善――隊員家族を苦しめる「引っ越しビンボー」という宿痾

高くてボロいうえ退去時には「大金」を要求される!?

 引越し代自腹については今回解消されましたが、まだいくつか気になる問題があります。例えば官舎の修繕費です。自衛隊の官舎には新しいものもありますが、築50年を越えそうなボロボロのものもあります。老朽化した建物は耐震性に不安がありますし、昭和に建てられた建物の多くがそうであるように、自衛隊の官舎が津波の浸水域にある事例もあります。これでは災害時に自衛隊官舎が崩落し、浸水して駆けつけるべき隊員自身が被災する可能性もあります。早急に改善すべきです。  また、老朽化した官舎には退去時に修繕すべき箇所もたくさんあります。古い官舎だと整備負担金 水道全般修繕費・屋内清掃・畳全室張替え・浴室台所塗装・退去費として20万円支払ったと聞きました。大きな出費です。2~3年に一度繰り返される幹部自衛官の「引っ越しビンボー」要素はまだまだ残っています。そんなに異動が必要なのかなと疑問です。
陸上自衛隊

陸上自衛隊公式Twitterより

 新たに官舎を建て替え、居住環境を改善するのは雇用者の責任であると思いますが、いかんせん自衛隊には予算がないため応急処理でしのぎます。自衛隊員は居住場所を規則で決められている特殊な職業なのですから、その居住場所の保全は当然、国の義務ではないでしょうか? 古い住宅の壁は、塗り替えたとしても内部の腐食が進んでいます。退去時に大きなお金を請求されるような官舎はもはや福利厚生の施設とは呼べないですよね。  さらに、自衛隊の官舎に限らず国家公務員の官舎費用は軒並み値上がりしています。首都圏の官舎は10万から20万円程度の官舎費です。高くてボロで退去時に大金が必要なんて、もはや「罰ゲーム」です。呼集で一時間以内に出勤する義務のある「緊急参集要員」は特別に官舎費が無料となりますが、駐車場代と管理費は別枠で実費8万円を徴収されたとの経験談を聞きました。なんと自転車駐輪場代金も別に徴収されるのだと! セコイ! セコすぎるわ。  自衛隊の官舎はおおむね戦略的な拠点にあります。いざと言うときに即応体制が簡単に取れる場所です。国有財産の払い下げによる財政のスリム化という方針の下、自衛隊の土地もポンポン売却されているようです。しかし、ひとたび売却すれば、地政学上の要所に再び拠点を得ることができなくなります。そういう人が集まりやすい重要な拠点だからこそ、自衛官のために強固な官舎を新築し、シェルターの機能もつければいいのではと思います。ヘリポートなども備えて緊急搬送の拠点に使う等、新たな用途も考えるべきです。新型コロナウイルスの問題もあることですし、検討してほしいものです。
陸上自衛隊

陸上自衛隊公式Twitterより

 国を守る人の生活待遇を変えていくことは、私たちの生命と安全を守ることに繋がります。目先の経費削減・財政健全化ではなく、大局的な視点で賢く考えて行動したいものですね。 <文/小笠原理恵>
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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