エアアジアの1万3000円「1年間乗り放題パス」に日本人が殺到、その顛末は…
新型コロナウイルスが世界を陥れている。経済は完全に停滞し、とくに旅行分野では未曽有の被害が発生している。現時点で「全ての外国人の入国を禁止」という措置を取っている国が複数ある。そうなると、航空会社が大きな損失を被ってしまう。LCC(格安航空会社)などは尚更だ。そんななか、エアアジアがこんなことを言い出した。
「1万3000円で1年間乗り放題にします!」
東南アジアのLCCの先駆けといえば、エアアジアである。エアアジアグループの旅客機は日本にも接続されていて、これを使えばオフシーズンは1万円台でマレーシアまで行くことができる。「新幹線よりも安い旅客機」として、日本人の間でもエアアジアは大人気だ。
そもそもエアアジアは、アジア各地へ出稼ぎに行く労働者の存在を強く意識したキャリアでもある。たとえばインドのチェンナイから首都ニューデリーに出稼ぎに行く場合でも、列車に乗れば2日がかり。しかし、チェンナイ~ニューデリー間の航空便のチケットが列車並みに安ければどうだろうか。数時間もあれば目的地に到着できる。
エアアジアのキャッチフレーズ「Now Everyone Can Fly(誰でも空を飛べる)」とは、そのような要素も含まれている。しかし、新型コロナウイルスは誰しもが空を飛べなくなる状況を作り出してしまった。
2月15日、筆者はタイ・バンコクの空港にいた。日本に帰国するためだ。その頃には既に中国発着便が運休され、フライトを待つ利用客の大半はマスクを着用していた。そこからさらに2週間後、エアアジアは『AirAsia Unlimited Pass』という商品のネット販売を始めた。
これはクアラルンプール及びバンコクを発着するエアアジアXとタイ・エアアジアXの便を対象にしたもので、なんと499リンギット(約1万3000円)で1年間乗り放題という内容。中国、オーストラリア、インド、韓国、そして日本への路線もキャンペーン対象に含まれている。
この年間パスで1日に搭乗できるのは2回まで。預入荷物や機内食等の費用は別途。しかしそれを差し引いても、たったの1万3000円でエアアジアグループの国際線を1年間利用できるのだ。とはいえ、エアアジアの年間パスには購入条件があった。
それは、マレーシア在住者限定という条件である。海外旅行好きの間で大いに盛り上がったこの話題だが、規約をよく読めばマレーシアに住んでいる者以外には縁のない話だ。しかし、人は知恵をめぐらせる動物。VPNを利用することで、日本にいながら年間パスを購入するという者が現れたのだ。
VPNとは「Virtual Private Network」の略。公共のネットワークに仮想の専用回線を設けることで外部からの干渉を回避するVPNだが、この場合は疑似的に「マレーシアからのアクセス」を実現させる。
本当は日本の自宅でスマホないしPCを操作しているのだが、マレーシアのVPNサーバーを通すことで現在地の詐称ができるのだ。それをエアアジアが拡大解釈して「このユーザーはマレーシア在住者」としてしまった。
そんななか、無料のVPN接続アプリを使って、エアアジアの年間パスを購入した日本人も現れた。その人物のブログを見た者が、我も我もという勢いであとに続く。とはいえ、それに気づかないほど、エアアジアは鈍感ではなかった。
この宣言が、多くの日本人を巻き込み大騒動になったことを皆様はご存じだろうか。新幹線の品川から新大阪までの片道料金よりも安く、飛行機に1年間乗り放題……。かなりお得に思える。しかし、これには条件があった。今回は、騒動の顛末をお届けする。
エアアジアは新幹線よりも安い旅客機
日本発着便も対象の激安年間パス
マレーシア在住者限定のはずが、VPNを介して購入する日本人も…
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