新型コロナ治療薬、なぜアビガンよりレムデシビルが先に承認されたのか?
新型コロナウイルス治療薬を巡るメガ・ファーマ戦争
ただ、レムデシビルも肝機能障害、下痢、腎機能障害といった副作用が頻繁に指摘されており、多臓器不全、敗血症性ショック、急性腎障害など重篤化するケースも報告されている。一方、アビガンの“待望論”は早くからわき上がっていた。スムーズに承認されない理由は、本当に厚労省が抱える「過去の呪縛」だけなのか……? 医師で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が話す。
「厚労省がPCR検査の数を絞ったため、治験しようにも感染者がいなくてできなかったというのが、承認が先延ばしされている真相です。治験は患者がいなければできないが、日本ではランダム化試験を行うにも被験者のリクルートに時間がかかるのが実情……。現在のように、観察研究など行う暇があったら、すぐさま治験をやるべきなのにすべてが後手に回っていると言わざるを得ない。
そればかりか、富士フイルム富山化学のアビガンの物質特許は、日本では5年間の延長手続きを行っており’24年まで有効なのですが、中国においては’19年に失効しています(ただし、製造特許は存続)。中国企業との間で交わした販売ライセンス契約もすでに終了しているため、今後、富士フイルム富山化学にはロイヤルティなどは入ってきません」
長らく日本国内に閉じこもり、単独でグローバルな治験を行う力のない企業にとって、いきなり、メガ・ファーマがシノギを削る世界に放り出されるのは酷な話だろう。実際、レムデシビルを巡っては、すでに米中の激しい小競り合いが繰り広げられているからだ……。上氏が続ける。
「英医学誌『ランセット』には、中国の製薬企業のグループが特許で保護されているレムデシビルを勝手につくって治験を行ったところ、『目立った効果はなかった』というリポートが掲載されていました。治験の結果が芳しくなかったのは、恐らくこの頃には新型コロナの感染が収束しつつあり、感染者が集まらなかったからと見られます。
一方、ギリアド社が国際共同治験を行ったのは、各国で一斉に承認を取りたかったからで、これにはNIH(米国国立衛生研究所)が資金を助成している。米中の衝突は、新型コロナのパンデミックが引き金となって、世界のメガファーマ(巨大製薬企業)が熾烈な競争を繰り広げていることを如実に物語っている。
特に中国の動きは早く、3月18日の時点でファビピラビル(アビガン)の臨床試験の結果を2件発表するなど、とてつもないスピード感で研究を進めていました」
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