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新型コロナは私たちの価値観をどう変える?歴史学者が読み解く

科学に頼った「人命第一主義」でいいのか?

「医療の専門家は『人命が第一』だと言うけれど、本当にその一言で終わらせていいのでしょうか。そんな単純な問題ではないでしょう。実際に経済を回していかないと、人々は金銭面で追い込まれていく。それが原因となって、自殺やほかの病気などによる死者も出ます。また、自粛疲れのほうが健康や精神に悪いかもしれません。  パンデミックによる影響は、社会の複合的な問題なのに、なぜ専門家会議に経済の専門家がいなかったのかが疑問です(※)。科学的にゼロかイチかで解決する問題はさほど多くありません。例えば、科学者は原爆を止められず、きちんと反省もできなかった。科学的な視座は大事ですが、科学ばかりを信奉していていいのか。科学は万能ではなく、相対的な価値観や視野が必要なはず。社会の成熟のためには、今こそ文系学問の専門家が知恵を出し合うべきなんです」 ※専門家会議は6月に廃止。7月に発足した「新型コロナウイルス感染症対策分科会」には、経済学者や新聞社幹部も参加  さらに本郷氏は「感染症の歴史は戦争と表裏一体」だと語る。 「感染症によって生活や移動が制限されると、人々の思考はどうしても内向きになる。贅沢はできないし、例えばこれまでの収入の数分の1で生活しなければならないとなったときに、人は果たしてそれに耐えられるか。  日本人はよくも悪くも我慢して耐えているけれども、上昇志向が是とされるアメリカや、経済成長を続けていた中国では事情が違う。縮小した富の奪い合いが始まり、米中の緊張もさらに高まっていく」
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コロナ後に希望を持てるとすれば…
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