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新型コロナは私たちの価値観をどう変える?歴史学者が読み解く

―[コロナ後の未来]―
 新型コロナウイルス感染拡大の長期化に備えて、政府は国民に対して「新しい生活様式」を取り入れるよう、呼びかけている。「もう以前の生活には戻れない」と言われているが、収束した後の世界はどう変わってしまうのか。
コロナ後の未来

ドイツのメルケル首相。新型コロナウイルス対策で国民への真摯な呼びかけが奏功し、危機時に頼れる指導者として再び期待が高まる

歴史を見ても、ウイルスに打ち勝てていない

 感染症の歴史と、そこから見えてくる「コロナ後」の世界観の変化について、本郷和人・東京大学史料編纂所教授はこう話す。 「歴史上、人類が克服した感染症は’80年にWHOが根絶を宣言した『天然痘』だけです。100年前に全世界で死者5000万人ともいわれる猛威を振るった『スペイン風邪』にしても、あれはA型インフルエンザ・ウイルスで、私たちは今も感染症と長い付き合いを続けているわけです。  つまり今回の新型コロナウイルスについても、人類は『どう打ち勝つか』ではなく『どう共生していくか』を考えないとなりません。言い方は残酷ですが、がんと同じで“死ぬ人は死ぬ”。大事なのは、これをキッカケにして『なにが幸せな人生なのか、よい社会なのか』といった価値観を改めて問い直すことでしょう」  これまで、人々は暗い時代を経験すると、自らの人生を深く考えるようになり、世界各地で新しい文学や芸術が生まれ、新たな宗教が誕生してきた。今回のパンデミックでも、そうした哲学的な探求や、文化的なムーブメントが起こるのだろうか。 マスク

目先の利益しか考えていない

「特に日本人については、現状では私はとても悲観的です。なぜなら、今の日本人は『現世利益』にとらわれすぎているからです」と本郷氏は指摘する。 「日本は世界の感染症については(島国ゆえに)比較的影響を受けずにきた国ですが、戦争や飢饉に苦しむことは何度もありました。例えば私の専門でもある鎌倉時代は、平安末期からの混乱を長く引きずった。そこから生まれたのが鎌倉の新仏教です。  貴族のものだった仏教は庶民のもの、武士のものになっていった。宗派によって異なりますが、『南無阿弥陀仏』という念仏さえ唱えれば、貴賎を問わず極楽に行けるという教えが定着しました」  もちろん、宗教は一度教えが広まれば終わりでなく、解釈の発展や深化があるはずだ。 「それを止めてしまったのが、織田信長の一向宗徒虐殺です。さらに豊臣秀吉の時代にキリスト教も排斥されると、日本人の宗教からは哲学的な思想が抜き取られた。自分の身近な利益だけを求めるようになり、それは平穏な江戸時代が終わるまでずっと変わらなかった。“葬式仏教”になってしまい、物事を探究する力が失われてしまったのです。自分の心が安らいでいることに最大の価値を置く、難しい思想を排除した『現世利益第一主義』が、今のコロナ禍における『人命第一主義』にもつながっています」
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科学に頼った「人命第一主義」でいいのか?
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