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自家用車に代わる? シェアサイクルが全国で急増、静岡市で試乗してみた

 シェアサイクルが普遍的な移動手段として確立する日は、そう遠くないだろう。先日、静岡県静岡市に登場した『PULCLE(パルクル)』というサービスがある。これはスマホアプリやキャッシュレス決済と連携したオンライン貸自転車事業。運営者はTOKAIケーブルネットワーク、トコちゃんねる静岡、OpenStreetだが、静岡市も実施主体として参画する。
シェアサイクル

静岡県静岡市のシェアサイクル事業『PULCLE(パルクル)』

 サービスのローンチに合わせて、静岡市役所前にPULCLEの専用駐輪場が設置された。これをきっかけに、シェアサイクルという環境に優しいオンラインサービスが再び注目されるかもしれない。  ちなみに、シェアサイクルを本格導入している自治体は、2018年末で全国135都市。実験中・検討中も68都市にのぼった(国土交通省調べ)。

シェアサイクル事業に影を落とした「oBike」

 スマホアプリを使って自転車の予約や駐輪位置特定、そして貸出時の決済を完結させる仕組みのシェアサイクル。思い立った時にいつでも自転車に乗れるということで、3年ほど前に世界的なブームを巻き起こした。当時、この業界で最も劇的な勢いを見せていたのがシンガポールのoBikeだった。自国はおろか世界各国へ数千台のGPS機能付き自転車と共に進出し、ファンドからの巨額出資も相次いでいたoBike。だが、その栄華は長く続かなかった。  oBikeの最大の特徴は、自転車1台毎にGPSとソーラーパネルが装備されている点だ。これにより、利用者はスマホアプリからすべての貸出可能車両の現在位置を確認できる。逆に言えば、乗り終えた自転車はどこに停めても構わないということだ。  チューインガムに対しても厳しい規制を導入しているシンガポールで、放置自転車が目立つようになってしまった。筆者は2年前、oBikeに関する取材のためにシンガポールへ赴いたが、故障したまま誰も修理する気配のない貸出自転車が歩道のあらゆるところに置かれていた。もちろん、それを黙認するシンガポール政府ではない。oBikeに対して自転車1台単位のデポジット納付を要求した。直後、oBikeはシンガポールでのサービスを停止してしまった。事実上の経営破綻である。  このoBike騒動は、シェアサイクル事業全体の成長を阻害する要因になった。事業者が数千単位の自転車を持ち込むことに対して、地元住民が反発するようになったのだ。

市内の複数個所に駐輪場を設置

 では、冒頭のPULCLEはどうか。自治体との提携事業ということもあり、さすがにoBikeのような「どこでも駐輪」という設計にはなっていない。先述の事業参画企業OpenStreetが提供するスマホアプリ『HELLO CYCLING』に表示される駐輪場に停めなければならない仕組みだ。
HELLO CYCLING

「HELLO CYCLING」の画面

 PULCLEの自転車は15分70円、12時間1000円で乗ることができるが、必ずしも借りた時と同じ駐輪場へ戻ってくる必要はない。そこがHELLO CYCLINGの駐輪場であればいいのだ。
PULCLE

HELLO CYCLINGの駐輪場

 乗車後の決済はアプリに登録のクレジットカードでもいいが、それがなければ交通系ICカードでも構わない。電車の延長線上で自転車を借りることもできる。ちなみに、サービスは24時間年中無休。 PULCLE PULCLEは清水エスパルス公認の事業でもある。故に、イメージカラーはエスパルスオレンジ。市民の財産でもあるJ1クラブチームとの連携を実施した点は、高評価に値する。
PULCLE

電動アシスト自転車なので楽チン

 電動アシスト自転車だから、乗り心地は申し分ない。静岡市街地の周回くらいなら難なくこなせるだろう。  街中のちょっとしたスペースを活用して専用駐輪場を作っている点も、筆者としては前向きに評価したい。それを実現させているのは「身の丈に合った運用台数」である。oBikeのように、数百数千の自転車を無理やり市中に展開させる方法は採っていない。10台も停められないほどの小さな駐輪場を、街の景観に調和させる形で設置する。2年半前までのoBikeのような急拡大は、PULCLEには見込めないだろう。しかし田辺信宏市長の肝入りで開始されたこのサービスは、暴飲暴食じみた利益の獲得が目的ではない。「市民の生活レベルの向上」を念頭に置くなら、景観との調和は絶対不可欠だ。
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