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セルフのガソリンスタンドで最も便利なキャッシュレス決済は何か?

 セルフ方式のガソリンスタンドほど、完全キャッシュレス化に移行せざるを得ない業種はないのではないか。車内の中で小銭と格闘するわけにはいかない。給油自体が済んだら、早いところその場から離れたい。が、ガソリンを満タンまで入れた場合1円単位の細かい請求額が発生してしまう。想像するだけでも煩わしい。
ガソリンスタンド

セルフ方式のガソリンスタンド(と筆者の愛車)

 だからこそのキャッシュレス決済であるが、その方法はもちろんひとつではない。クレカ、交通系ICカード、NFC搭載スマートフォン……。が、ひとつ言えるのはセルフスタンドでは「タッチ決済」が強みを発揮するということだ。

交通系ICカードの「利点」と「欠点」

 セルフスタンドとそれに伴うキャッシュレス決済が確立する以前、ガソリンスタンドでの「満タン」を嫌う人が一定数存在した。  その理由は冒頭に書いた通り、非常に細かい単位の請求額になってしまうからだ。だから「3000円分入れてください」というように、端数が発生しないように給油してもらう。が、時には店員の凡ミスで満タンまで入れてしまい、結局大量の小銭を財布に入れざるを得なくなった……ということすらあった。  しかし、それも今や昔の話。「アメリカの風習」というイメージだったセルフスタンドが1998年に登場して以降、この業態の店舗は全国に拡大。最近ではクレジットカード以外のキャッシュレス決済の充実により、セルフスタンドの利便性はより向上した。 ガソリンスタンド 中でも、交通系ICカードはセルフスタンドと抜群の相性を発揮している。大抵の店舗では、2回のタッチで決済が終了する仕組みだ。クレカのようにカードリーダーに差し込む動作を必要としない分、手先のちょっとした煩わしさも解消される。ENEOSのスタンドではnanacoも有力な決済手段だが、他のブランドの店舗でも広く導入されているという点で交通系ICカードのほうが強い。  ただ、欠点もないわけではない。交通系ICカードの場合は「2回のタッチで決済が終了する仕組み」と先述したが、これは1回目のタッチで全残高を抜き取ってしまう仕組みだからだ。給油を済ませた後、2回目のタッチで差引額を残高に戻す。これを忘れたら、もちろん大損だ。  もっとも、この2回目のタッチにさえ気をつけていれば交通系ICカードは無敵の存在である。さらには物理カードのみならず、スマホのモバイルSuicaやモバイルPASMOに対応する店舗も着実に増えている。

「キャッシュレスの黒船」NFCクレカがやって来る!

ガソリンスタンド それを踏まえた上で、敢えて別の話題に触れたい。  日本でも今年から「NFCクレカ」の導入が本格化した。これはタッチ決済に対応したもので、従来のようにカードリーダーに通す必要はない。カード自体を痛めることがないというのもあり、海外ではポピュラーな決済手段になりつつある。  交通系ICカードとはNFCの規格が違うという問題もあるが、その使い勝手はSuicaやPASMOとあまり変わらない。今後、NFCクレカが日本で普及するとしたらその中心地はセルフスタンドではないかと筆者は推測している。  決して突飛な推測ではないはずだ。米エクソンモービルが全米で初めてApple Payでの決済を導入したのは2016年3月。そこから僅か4年で、日本のセルフスタンドにもApple Payが浸透した。これだけ見ても、ガソリンスタンドがキャッシュレス決済の普及に絶大な貢献をしていることがよく分かる。  しかも、クレカなら交通系ICカードのような「2回タッチ」は必要ない。利用残高を一旦全額徴収してしまう仕組みではないからだ。
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QRコード決済はセルフスタンドでは不便?
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ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー

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