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編集からもらったカネで打つ爆速パチンコ台「大工の源さん」

 今働いている環境を受け入れられずに仕事を辞めようか迷っている人はたくさんいるだろう。本人にとって大変なブラック企業でも、与えてくれたものはある。「束縛」だ。決まった時間にゲームやテレビなどの娯楽物を強制的に没収され、決まったことをひたすらにやらせる環境。無職がこれを手に入れようと思ったら記憶を消すか、大きな夢を持つか、パーティの大切な仲間が倒されなければならない。  僕は僕自身の1年間で人間の退化を見た。アツい希望に滾っている主人公以外の人間は放置すると退化していく。起きる時間はまちまちになり、同じyoutubeの動画を何度も繰り返し見て、同じところで同じように声を上げて笑うようになっていた。ハプニングの内容もオチもわかる動画を見て毎回笑っている自分を自覚した時、少し怖くなった。でも次の日には同じ動画を見てバカみたいに笑う。否、バカが笑う。  もう体ではわかっていたのかもしれない。自発的に就職することは無理だと。  こんな体たらくを見かねてか、編集の人が相談に乗ってくれた。金が無いので当然奢ってもらう。ポケットに財布を隠し、手ぶらで待ち合わせ場所に現れ、 「今日僕は一円も持っていません」  のポーズを取った。万が一にもお小遣いがもらえたらラッキーだな、と思ってそうした。人と会う時に手ぶらで行くのはこうした乞食根性が身についているからだ。  恥ずかしい話をたくさんした気がする。それを肴に日本酒を飲んだ。 「生活リズムの作り方を相談したいけど、作家気取りと言われるのが怖い」とか、 「本当は自分が大好きすぎて反省できない」とか、 「源さんというパチンコ台はマジでヤバい」とか。  話をさせるのが上手な人だな、と思った。この文章もどうせ彼が見ることになるので書いてしまうのも恥ずかしい話だが、今更だ。 「せっかくなら1万円あげるんで源さんでも打ちに行きますか!」  な、なんて優しいんだ……  一生この人の言うことを聞こうと思った。  飲み屋の近くで空き台を探し、1台だけ見つかったので僕が打つことにした。 「じゃあ近くにいるんで!」  受け取った1万円札は折り目のないピン札だった。絶対に勝って最高の1日にしたい。博打打ちとして、この機会に当たらないなんてことは許されないのだ。
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もらったカネのギャンブルは勝ちたい
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