乗ってきたタクシーから乗車拒否! なぜ?
新橋から帰りが同じ方向の同僚2人がタクシーに相乗りしていざ神奈川県。1人は川崎、もう1人は横浜。2人は川崎まで乗り、そこから横浜までは電車で帰るつもりであった。とりあえず川崎で同僚と割り勘するために精算。酔いが回って来たらしく足元がおぼつかない。やはり横浜までタクシーで帰ることに。一度精算した東京から乗って来たタクシーに再度乗ろうとしたが、乗車を断られた。
「何故だ、酔っ払っているからか!? これって乗車拒否じゃないか!? 犯罪だろ!」
なんて、新聞の投書欄……いやいや、Twitterなどのsnsにつぶやかれそうだが、これはいかがなものであろうか?
タクシーに乗る意思表示をしている人に対し、ドライバーは乗車を拒否することはできない。乗車拒否は、旅客自動車運送事業運輸規則」や「道路運送法」で定めた法律で禁止されているからだ。
しかし、正当な理由があれば拒否しても問題はない。その乗車拒否にあたらないケースが銀座の乗禁地区エリアでの乗り場以外での客の申し出の拒否、そして営業区域外での客の申し出の拒否である。タクシーには、需給量の調整のために営業区域が設けられている。タクシーの営業区域は全国643の区域に分けられ、東京だけでも5区域に分かれている。
《東京都区域》
①特別区・武三交通圏
東京23区・武蔵野市・三鷹市
②北多摩交通圏
立川市・府中市・国立市・調布市・狛江市・小金井市・国分寺市・小平市・西東京市・昭島市・東大和市・武蔵村山市・東村山市・清瀬市・東久留米市
③南多摩交通圏
八王子市・日野市・多摩市・稲城市・町田市
④西多摩交通圏
青梅市・福生市・あきる野市・羽村市・西多摩郡(瑞穂町・日の出町・奥多摩町・檜原村)
⑤島地区
東京都島嶼部(大島町・利島村・新島村・神津島村・三宅村・御蔵島村・八丈町・青ヶ島村・小笠原村)
基本、その交通圏区域内での営業が原則である。また、例外として、発着、つまり乗せた場所か降ろした場所が営業区域内であれば問題はない。
Ex.特別区が営業区域の場所
東京ドーム(東京都文京区)→マリンスタジアム(千葉県千葉市) ◯
マリンスタジアム(千葉県千葉市)→横浜スタジアム(神奈川県横浜市) ×
したがって、上記のサラリーマン2人の例の場合は東京→川崎は問題ないが、川崎→横浜の営業区域外の営業となってしまうため乗車拒否にならない。では、上記の例のように東京→川崎→横浜というルートは乗せることはできないのか?
降りるだけ立ち寄るだけの経由であれば営業として捉えるが、途中で精算するとそこから新たな営業となってしまう
恐れがある。この場合は
そのまま着地の横浜で精算すれば問題はなかった。
また、拾った2人が営業区域内であるので、川崎で1人精算したあとにそこから再度メーターを入れて(区域外の営業と思われがちだが)もう1人を横浜まで送った場合も可能となる。一連の流れとして捉えるからだ。※
太字部分、追記(2020年9月12日)
物流ライター。ライター業の傍らタクシードライバーとして東京23区内を走り回り、さまざまな人との出会いの中から、世の中の動向や世間のつぶやきなど情報収集し発信する。また、最大手宅配会社に長年宅配ドライバーとして勤務した経験とネットワークを活かし、大手経済誌のWEB版などで宅配関連の記事も執筆する。タクシー・宅配業界の現場視点から、「物」・「人」・「運ぶ」・「届ける」をそれぞれハード(荷物・人)だけではなく、ソフト(心と気持ち)の面を中心に記事を執筆中。ブログ
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