更新日:2020年10月12日 08:25
ライフ

新橋で営業するタクシーは川崎で客を拾えない? タクシーの縄張り事情とは

回送タクシー

営業区域内外での間で起こる葛藤

 営業区域外での営業行為はご法度。駅のタクシー乗り場や収容施設、もちろん流し営業などはしてはいけない。たまたま降ろした場所で客の申し込みに合致(営業区域内へのリターン)した場合のみ成立する。  こんな事例がある。都内から千葉県の東京ディズニーリゾート(千葉県浦安)に乗せ、降ろした際に客の申し入れがあった。行き先は同じ千葉県内。送り先が近かったらなんの躊躇することなく「営業エリア外なので」ときっぱり断ったであろうが、行き先はなんと鴨川(鴨川シーワールドで有名な)¥30000以上の超ロング客。逃すのはもったいないが行くわけにも行かない。ここで出した決断が……。  とてもグレーな部分であるが、どの業界にも裏技というか違反スレスレに行う奴がいる。  東京ディズニーリゾート近くの舞浜大橋を渡ったらすぐ葛西臨海公園。目の前の橋を渡れば営業区域内なのだ。  乗客の許可を得てのことだが、ひとまず浦安(千葉)→葛西臨海公園(東京)に乗せ一旦精算。そして、葛西臨海公園(東京)→鴨川(千葉)へと走った。もちろん浦安→葛西臨海公園の運賃はドライバーが負担し、葛西臨海公園→浦安の分の運賃も割引いた。  このようなケースは、神奈川県や埼玉県、千葉県の東京都との境界にある市町村だからこそ為せる技。(遠ければ遠い程ドライバーの負担分は大きくなるが……)しかし、周りに他のタクシーがいなかったなどの事情があったにせよこの行為はご法度である。そもそも乗客には東京に行く意思などないのだから。

「乗車拒否だ~」と思う前に

 ひと昔前なら営業区域外営業もGPSに管理されることもなく手書きの日報で自己申告なので誤魔化していたドライバーもいたであろうが、今はGPSのもと業務終了後に出されるデジタル営業日報一覧で確認できる。誤魔化しようもない。タクシー業界、自由そうで結構決まり事が多く堅苦しい世界である。  乗る側からしてみれば、そんなのどうでもいいじゃないかと思うことであるが、みんな何だかんだ何かしらの縄張り意識を持っているはず。  空車のタクシーに手をあげてスルーされることがあったとしても、そこは「乗車拒否だ~」と思う前に、車のナンバーを見て確認してみると納得いく場面に出会すかもしれない。
物流ライター。ライター業の傍らタクシードライバーとして東京23区内を走り回り、さまざまな人との出会いの中から、世の中の動向や世間のつぶやきなど情報収集し発信する。また、最大手宅配会社に長年宅配ドライバーとして勤務した経験とネットワークを活かし、大手経済誌のWEB版などで宅配関連の記事も執筆する。タクシー・宅配業界の現場視点から、「物」・「人」・「運ぶ」・「届ける」をそれぞれハード(荷物・人)だけではなく、ソフト(心と気持ち)の面を中心に記事を執筆中。ブログ「吾は巷のインタビュアー!」
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