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オフ会で出会ったUber Eats配達員たちが、コロナ禍で飲食店を起業した理由

 新しい働き方として注目されているUber Eats。独立などの夢を追う人にとっても、「資金稼ぎにちょうどいい」と人気だ。  Uber Eatsでの出会いをきっかけに、共同でカフェバーを開いた人たちがいる。お互いの顔も名前も知らなかった彼ら。なぜ共同経営しようと思ったのか。開業に至るまでの経緯を取材した。

オフ会で出会って起業。元は見知らぬ他人同士

Mixing

Uber Eats配達員同士が出会って開業したレコードカフェ&バー『Mixing』

 今年9月、京都にオープンしたレコードカフェ&バー『Mixing』(京都市中京区)。壁一面にレコードが飾られているこの店は、Uber Eatsの元配達員たちが経営している。 「Uber Eatsの配達員を始めた頃は、店を開くなんて目標は無かったんですよ。配達員をやっていたら、たまたま出会いがあって、誘われて開業することになったんです」  そう語るのは、店長の村本さん(36歳)。昨年まで東京の飲食業界で働き、年明けから地元である京都に戻ってきた。配達員を始めたのは、転職活動中の“繋ぎ”としてだった。 「地元で転職しようと思っていたところでコロナが流行り、転職したくてもできない状況になりました。Uber Eatsの配達員システムは前から知っていて、おもしろそうだなとは思っていたんです。生計を立てるための手段として、とりあえず始めた感じですね」  専業配達員としてバイク稼働をする日々。そんなある日、配達員同士のオフ会に参加することになった。 「そのオフ会自体は、自己紹介してランチして……って普通の交流会でした。でも次の日になって、オフ会参加者のひとりから『一緒に店やらへん?』って連絡が来たんです。一度会っただけなのに、僕の何を信頼して言ってるんだ!? ってビックリでしたね(笑)」  村本さんを誘ったタツさん(仮名)は大のレコード好き。レコード愛好者が集うバーを開きたかったそうだ。村本さんとは音楽の趣味が合い、それがきっかけで声をかけたという。 「オフ会があったのが今年の4月頃。6月くらいから物件を探し出して、7月には契約を結びました。そこからオープンまで、店の外観や内装を自分たちでDIYしつつ、時にはUberの配達員の人たちに手伝ってもらいながら作り上げていったんです」 店内 とんとん拍子で進んだ話。村本さんがタツさんからの誘いに乗ったのは、「いつか自分の店を開きたい」という気持ちを持っていたからだ。

飲食の道に進むも、一度はバンドマンに……

村本さん

村本さん

 京都で生まれ育った村本さん。父親は飲食店を経営しており、自身も高校卒業後に上京して料理の道に進んだ。 「最初に働いたのはフレンチレストランでした。だから僕、ソムリエの資格も持っているんですよ。でも『趣味の音楽で食べていきたい』と思った時期があって……店を辞めてから数年間、本気で音楽活動していた時期もあります」  バンドマンとして真剣に活動を重ねた末に、やはり飲食の道に戻ることにした。年齢的な問題や、継続的にバンドで収入を得るのは難しいと判断したからだ。  飲食業界で働きつつ、ぼんやりと「いつかは自分の店を……」と考えていたという。配達員として得た収入を開店資金の一部とし、店舗改装やメニュー作りを進めていった。  物件が決まると、「3人目の協力者」である元希さん(39歳)がメンバーに加わった。  元希さんもUber Eatsの配達員。夕方からMixingのキッチンを間借りし、デリバリー専門でスペイン料理や丼もの・お弁当を提供している。  彼もオフ会がきっかけでタツさんや村本さんと出会ったひとりだ。
左:元希さん、右:村本さん

左:元希さん、右:村本さん

「元々は普通のサラリーマンでした。料理が大好きで、大学を出てからメーカー勤務をしたあと、飲食の仕事もしたんですが……仕事がキツくて続かず、またサラリーマンに戻ったんです。でもやっぱり料理の仕事がしたくて、サラリーマンをしながらスペイン料理店でアルバイトもしていました」(元希さん)  副業でUber Eatsをしていたが、飲食業界をもう一度目指そうと脱サラ。しかし村本さんと同じく、コロナの影響で転職が難しくなり専業配達員になったそうだ。 「Uberをやっていくうちに、デリバリーやテイクアウト専門のお店なら自分ひとりで回せるんじゃないかと考えるようになりました。そんな時に、タツさんから『村本さんと店をやるが、一緒にデリバリー専門のレストランをやらないか』と声をかけられたんです。お店を間借りしてのゴーストレストラン(※)なら、設備投資の費用がほぼかかりません。初期費用を抑えられて低リスクで始められるので、魅力的だなと思ったんです」(元希さん) (※)コロナ禍のテイクアウト・デリバリー需要で急増中の“実店舗をもたない飲食店”。一ヶ所のキッチンをシェアする形などで、複数の専門店が展開されることもある。
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コロナ禍だからこそ…
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【Cafe&Bar Mixing】
京都府京都市中京区壬生東高田町2-1
ランチ 11:30~15:00 [14:30L.O]
ディナー17:00~23:00
定休日:毎週火曜日

【パエリアとタパスのバル シエロ】
【大盛り丼とお弁当のまんぷく丸】
デリバリー&テイクアウト専門
注文受付 17:00~(Uber Eatsアプリから注文可能)
定休日:Mixing定休日に準ずる

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